研究課題/領域番号 |
19K08180
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
西嶋 剣一 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60364254)
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研究分担者 |
東川 桂 北海道大学, アイソトープ総合センター, 助教 (10756878)
粟生木 美穂 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助手 (10783227)
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
趙 松吉 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80374239)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 治療用放射性薬剤 / 癌 / チミジンホスホリラーゼ / アスタチン |
研究実績の概要 |
我々は腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連がある血管新生因子(PD-ECGF)を標的とした新規腫瘍診断薬剤について系統的に研究し、PD-ECGFに高い親和性を有するI-123標識IIMUを開発した。福島県県立医科大学では、中型のサイクロトロンを有し、近年治療用放射性核種として盛んに用いられているα線放出核種At-211の製造を達成している。本研究の目的は、腫瘍診断薬剤を目的に開発した化合物IIMUを治療用放射性薬剤At-211標識AIMUへの展開を目指すことである。本研究課題では、1)At-211標識法の確立:本学で製造されるAt-211溶液を用い、At-211標識AIMUの合成条件の最適化、2)培養細胞を用いた検討:細胞へのAt-211標識AIMUの取り込みを確認、異なる放射能量のAt-211標識AIMUを培養細胞に添加し、細胞の生死判定を評価、3)動物を用いた検討:正常および腫瘍移植マウスにAt-211標識AIMUを投与し、体内動態および治療効果を検証する。以上の検討によりAt-211標識AIMUの治療用放射性薬剤としての可能性を模索することとした。 本年度は、1)At-211標識法の確立を目指し、本学で製造されるAt-211溶液を用い、At-211標識AIMUの合成条件の基礎的検討を実施した。At-211溶液(メタノールまたはクロロホルム)を用い、AIMUの基本骨格であるウラシルを用い、標識合成を検討した。その結果、2つの標識化合物の生成を確認した。HPLC分析にて求めたそれらの放射化学的収率は10%以下と低く、その大部分は、HPLCカラムに吸着した。At-211標識ウラシルが得られたと考えられるが、目的物以外の放射能ピークの存在、未反応のAt-211が大部分であることから、さらなる検討が必要を考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IIMUの基本骨格であるウラシルを用い、その5位にAt-211を導入(標識)を行い、AIMUへの標識条件を模索した。その結果、標識化されたピークがHPLC分析により2つ確認された。2つのピークのうち1つは各種ハロゲン化(F、Cl、Br、I)ウラシルとの保持時間より、At-211標識ウラシルと思われるが、At-211は安定同位体が存在しないため、標識した化合物の標品がなく同定が困難である。引き続き、複数のHPLC分析条件にて検討を行っているところである。反応機構、これまでのハロゲン化ウラシルの合成検討から目的物(At-211標識ウラシル)のみの生成を考えていたが、標識物が2つ存在したことにより、その究明に時間を要してた。
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今後の研究の推進方策 |
基本骨格ウラシルを用いたその5位にAt-211を導入(標識)の検討し、AIMUへの標識合成へ移行する。またAIMUの標識合成においても、不明のピークの生成が考慮されるため、複数のHPLC分析法を検討する。また、未反応のAt-211のHPLCカラムへの吸着が多く、ラジオTLCによる分析法を追加検討する。At-211標識ウラシルやAIMUが得られ次第、細胞実験および動物実験を行う予定である。At-211標識化合物を基礎実験に供給しつつ、引き続き、標識条件の最適化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、当初予定していた目的物の標識合成の進捗が遅れているため、試薬等の購入が減った。翌年度については、細胞・動物実験を計画しており、次年度使用額を細胞・動物実験に充てて計画的に使用する。 また、旅費については、新型コロナウイルの影響により情報収集のため参加予定であった学会が中止になったため、旅費が減ったことによる。旅費については翌年度分についても、学会等の中止により旅費の使用が減ると考えられる。旅最終年度に向けた成果発表等、計画的に使用する。
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