研究課題/領域番号 |
19K08181
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
加藤 貴弘 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90778804)
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研究分担者 |
高井 良尋 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, センター長 (50107653)
廣瀬 勝己 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 診療所長 (60623767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / 加速器 / 幾何学的QA / 線量的QA / 熱外中性子 |
研究実績の概要 |
今年度はモンテカルロシミュレーションの高速計算を実現させるためのワークステーションの購入と新規ファントムの製作を予定していたが、ファントムの詳細設計後、製作費用を試算したところ、想定よりも高額となることが判明した。そこでワークステーション、ファントムの購入は一旦延期し、既存のワークステーションでの計算を先行実施するとともにファントム仕様の見直しを図ることとした。 原子炉BNCTによる先行研究を参考にして加速器BNCTの至適ファントムサイズの検討をモンテカルロシミュレーションにより実施した。シミュレーションにおいてはコリメータ面の幾何学的構造から先行研究と同様な体系を構築することが難しいことが判明したため、一部体系に修正を加えたうえでファントムのサイズを15 cm×15 cm×15 cmから100 cm×100 cm×50 cmまで計9条件(コリメータサイズが3種類あるため全部で27条件)、それぞれのビーム中心軸上における熱中性子フラックス、速中性子線量率、ガンマ線線量率を導出した。その結果、定期的なQAで用いるリファレンスファントムサイズは、現在多くの加速器BNCT施設で利用されている20 cm×20 cm×20 cm程度で妥当であることを改めて確認することができた。 その他として水ファントムをコリメータ面に密着させない状態において入射窓の変形量が許容範囲内に収まるファントム仕様を明らかにするため、複数のタイプの市販水ファントムを用いて検討を実施した。その結果、入射窓厚は5 mm必要であることを見出した。また、昨年度に引き続き検討していた幾何学的QAと日毎の出力測定ついては簡便で実用的な手法をある程度確立することができた。幾何学的QAに用いるコリメータアタッチメントを新たに設計、製作し、実用上問題ないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計27パターンのファントムサイズ条件におけるビーム軸上における熱中性子フラックス、速中性子線量率、ガンマ線線量率をモンテカルロシミュレーションを用いて計算した結果、実用に耐え得るファントムサイズについては十分な知見を得ることができた。基準条件と異なる条件下においても適応可能なファントム仕様についても検討を継続しており、ほぼその設計を終えている。 幾何学的QAについては一通りの検討を実施することができた。検証が不十分であった点については新たにQAツールを設計、製作し、実用上問題ないことも確認できた。日毎の出力測定手法についてはビーム電荷量、金箔サイズ、ゲルマニウム半導体検出器の応答特性など多角的な検討を行った結果、短時間かつ簡便に実施できる手法を見出すことができた。実際にこの手法で定期的に出力測定を実施した結果、加速器BNCTの出力は長期に渡って非常に安定していることも確認できた。 以上のことから、全体としては当初の予定以上に進んでいる項目もあり、順調に推移していると判断できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
既存のワークステーション上でモンテカルロシミュレーションによりビーム中心軸上の熱中性子フラックス、速中性子線量率、ガンマ線線量率のプロファイルを評価したが、現在検討しているQAプログラムではビーム軸に直交するプロファイルも年毎の評価項目として盛り込んでいる。20 cm×20 cm×20 cmのファントムでは飽和条件に対して辺縁のプロファイルが大きく乖離することが予想されるが、それがどの程度なのかを把握するため、引き続きモンテカルロシミュレーションで評価する。この評価を行うためには膨大な計算時間を要するため、改めてワークステーションの新規購入を検討する。また、当初設計したファントムは、構造が一部複雑であるため、加工コストが想定以上に膨らんでしまった。現在見直しを図っており、予算内での購入を見込んでいる。 加速器BNCTの装置仕様は未だ標準化には至っておらず、汎用的なQAプログラムの確立は時期尚早な面があることは否定できないが、現段階で考え得るQAプログラムについて議論することは非常に重要である。QAの方法や頻度は施設の運用形態や装置ベンダーとの契約形態にも依存するため、各施設の実態に即した形に適宜調整する必要性は生じるものと思われるが、実用性に耐え得る、根拠のあるQAプログラムを整備したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、モンテカルロシミュレーションを行うためのワークステーションと新たに設計した水ファントムの購入を予定していたが、水ファントムが思いのほか高額となってしまったため、構造を一部見直して改めて次年度に購入することにした。最終的な見積額が不明であったことからワークステーションの購入も次年度に持ち越すこととした。全体的な計画の変更はなく、研究費は満額利用予定である。
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