拡散MRIでは、水分子の拡散現象を通して生体の組織構造に関する情報が得られるが、被写体内の磁場不均一に起因した画像歪みが問題となっている。このため本研究では拡散MRIが最も応用されている頭部領域を対象として、画像ベースでの拡散MRI画像における幾何学的歪みから磁場不均一分布を推定する手法、ならびにその磁場不均一分布から組織定量値を推定する手法の開発を行うことを目的とした。 これまでに申請者が開発した画像ベースでの磁場不均一分布推定手法を改良し、画像ベースでの拡散MRI画像における幾何学的歪から磁場不均一分布推定手法の開発を行った。具体的にはシミュレートしたMR信号をk空間上で合成し再構成して画像空間で実測拡散MRI画像との一致度を評価し、共役勾配法を用いて反復的に磁場不均一分布を推定するアルゴリズムを開発した。さらに計算コストを削減するためMR信号の合成を画像空間で行い、磁場不均一分布推定での一致度の評価関数において新たに形態情報に基づく正則化項を考案した。また組織定量値推定では、上述のMR信号シミュレーションに組織モデルを組み込み、磁場不均一分布推定での反復計算過程にMR信号モデルでの組織定量値推定を組み込むアルゴリズムを開発した。 これら提案手法の有用性を示すため、公開されている拡散MRIデータベース(IXI DatasetおよびHuman Connectome Project)の拡散MRI画像データを用い、性能評価を行った。既存の手法であるレジストレーションベースの磁場不均一分布推定手法と比較し、提案手法が優れていることを示した。
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