研究課題
本研究では、線量平均LETによる臨床解析を行うために、線量平均LETや線量平均LETの標準偏差計算システムを開発し、散乱体方式の炭素線治療に使われた炭素線治療計画装置に実装した。これにより、過去に治療された症例を容易に解析できるようになった。2006年9月から2013年12月にQST病院にて炭素線治療が行われた頭頸部がん患者228例を対象とし、その内訳は、腺様嚢胞癌101例、悪性黒色腫59例、他の組織群68例であった。64.0Gy(RBE)処方された腺様嚢胞癌症例69例(再発44例・非再発25例)に対して解析を行ったところ、線量平均LETが有意な因子であることが明らかになった。なお、57.6Gy(RBE )処方された腺様嚢胞癌症例では有意差は認められなかった。また、悪性黒色腫症例でも、同様に有意差は認められなかった。2022年度には、症例数を増やして、視神経炎による有害事象に関する臨床解析を実施した。総視神経309本を解析対象とし、その内訳は視神経炎発症33本と非発症276本であった。解析の結果、線量が有意な因子であることが確認でき、線量平均LETが70keV/μm以上で、視神経炎が発症している傾向があることがわかった。炭素線照射による放射線生物効果を踏まえ、任意の細胞に対する生物線量計算法の開発については、臨床上重要な線量平均LET値を新たなパラメータとして、 様々な細胞照射実験データや文献データを用いて、RBE計算モデルの構築を進めた。細胞の放射線感受性を示すαについて、炭素線とX線のαの比をLETをパラメータとしてフィッティングしたが、(α/β)xが5未満ではRBEを過大評価し、10以上では過小評価する傾向があり、改善の余地を残した。今後は、(α/β)xが5未満の小さい細胞や10以上の大きい細胞等を加えて、フィッティングを行い、RBE予測精度を上げる予定である。
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International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology
巻: 11 ページ: 200-209
10.4236/ijmpcero.2022.114017
American Journal of Cancer Research
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