間葉系幹細胞は骨髄など多くの組織に存在し、抗炎症効果をもたらす新しい再生医療材料として注目されている。また、出産後に通常は廃棄される羊膜にも、間葉系幹細胞が存在することが最近明らかとなった。本研究では、担癌患者に施行される放射線化学療法の合併症として、しばしば重篤な経過をたどり有効な治療法のない放射線性口内炎に着目し、羊膜間葉系幹細胞による治療効果を明らかにして、放射線性口内炎の新たな治療法を確立するための基盤を整えることを目的とした。 羊膜由来間葉系幹細胞の培養上清をゲル化し、ラット放射線性口内炎モデルの舌に塗布して評価したところ、体重減少の抑制傾向がみられたが、対照群に比して有意差は認めなかった。また、舌の病理組織においても、病理スコアに改善は認められず、種々の炎症性サイトカインの発現も治療群において改善傾向を認めなかった。 次に、羊膜由来間葉系幹細胞の抗炎症効果を増強する効果を期待して、特定の遺伝子を強発現する間葉系幹細胞を作成し、培養上清を採取してin vitroの系においてその効果を検討したところ、培養マクロファージの活性化抑制効果が増強された。したがって、間葉系幹細胞を高機能なものに改変することで、その培養上清に抗炎症効果を増強する因子がより多く含まれることになり、治療効果が増強される可能性が示唆された。今後はこの遺伝子改変間葉系幹細胞由来の培養上清を用いて、動物モデルにおける効果を検討する必要がある。
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