| 研究課題/領域番号 |
19K08196
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| 研究機関 | 千葉大学 |
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研究代表者 |
宇野 隆 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30302540)
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| 研究分担者 |
根本 未歩 (渡辺未歩) 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50568665)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 担子菌抽出物 / 放射線防護 / 放射線治療 |
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| 研究実績の概要 |
初年度(2019年度)は、担子菌類の放射線防護作用について基礎的な検討を実施した。担子菌類は子実体（キノコ）を発生する菌糸であり、「培養担子菌抽出物質/以下：担子菌抽出物」は、(Agaricus blazei Murrill)の熱水抽出物である。本年度は「担子菌抽出物」の成分を分析し、リンパ球に対する放射線防護効およびマウスに対する致死的放射線照射からの生存率上昇効果について検討を実施した。
照射マウスリンパ球(0-3Gy：in vitro)に対する「担子菌抽出物」添加時の放射線傷害から防護(回復)効果について検討した。すなわち、正常マウスの脾臓リンパ球にT細胞およびB細胞マイトゲンを個々に添加してトリチュウム-チミジン(3H-TdR)の各リンパ球への取り込みに量を測定した。また、照射リンパ球に対する「担子菌抽出物」添加濃度および添加時期(照射前ならび照射後)について検討した。
マウスを用いた実験では大型の（ICR、雄、7-8週齢）を用いて「担子菌抽出物」成分の経口投与量の検討を実施し、その安全性と実験時の投与量を検討した。また、マウス（ICR、雄、7週齢）に致死線量（LD50/30）約7.5-8.0 Gyの全身照射（X線発生装置/日立、管電圧150 kV、管電流20mA）を実施し、「担子菌抽出物」経口投与の放射線障害に対する防護効果を照射マウスの生存率より検討した。さらに照射リンパ球では、照射後に「担子菌抽出物」を添加したリンパ球でDNAの合成が活発にみられ、照射による障害からの回復が認められた。これらのことから、マウスに対する照射前および照射直後からの「担子菌抽出物」投与試験を実施して抽出物の有効性（有効投与時期）について検討を加えた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「担子菌抽出物」の成分は分析の結果、熱アルカリ水抽出物でβ-(1-6)-D-glucanタンパク複合体を含む多糖類であった。マウスのリンパ球はICR雄マウス（8週齢）を用いてイソフルの吸入過麻酔による安楽死を実施し、直ちに脾臓を摘出して脾リンパ球浮遊液を作成した。
マウスリンパ球(50万個/well/0.2ml)の放射線感受性は、非照射リンパ球(Cont.)でトリチュウム-チミジン(以下：3H-TdR)の取り込みが培養4日目で1673cpm (100%)であり、1Gy照射ではCont.の49％、2Gyでは24％および3Gyでは18％であった。リンパ球に「担子菌抽出物」を添加すると非照射リンパ球では2.5倍から2.8倍の3H-TdRの取り込み増加がみられ、1-3Gy照射リンパ球でも2.2-3.5倍の増加が認められた。「担子菌抽出物」の添加濃度は0.4-1.6mg/mlの範囲で顕著に認められた。また、リンパ球のマイトゲン(ConA,LPS)を添加すると1-3Gy照射リンパ球「担子菌抽出物」非添加時と比較し25-30倍の3H-TdRの取り込みがみられた。
さらに、「担子菌抽出物」の添加時期について照射24時間前と照射直後に対する効果を検討した結果、照射前添加に対して照射直後に添加したリンパ球で3H-TdRの取り込みに有意(P<0.01からP＜0.001)な増加が認められた。
大型マウス(ICR系、雄、8週齢)を用いて、致死線量全身照射マウスに対する「担子菌抽出物」投与の放射線障害からの防護効果について検討した。7.5-8Gy照射マウスに対して「担子菌抽出物」の100-200mg/kg経口投与は、明らかな延命効果を示した。その効果は照射直後に投与を開始した群で顕著に認められた。
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| 今後の研究の推進方策 |
2020年度は、今年度に検討した結果より、放射線防護効果の解析を実施する予定である。昨年度の実験結果から照射マウスの死亡時期は、照射後10-14日後に集中して認められる。死亡個体の出現は、3-4日に限定してみられ、死亡前日まで比較的活発な行動が確認されている。放射線生物学的な確定的影響は被ばくによる免疫不全と骨髄死、もしくは胃腸管死と考えられた。「担子菌抽出物」投与による被ばくマウスの生存率上昇効果を究明するために死亡マウスの血液を培養して死因を究明する計画である。
さらに、今年度で明らかになった全身照射前「担子菌抽出物」投与では、マウスの延命効果が得られず、逆に死亡時期を早め、生存率を低下させる結果も得られている。このことは、照射前の「担子菌抽出物」投与によりマウスの免疫系が賦活され、照射により免疫系細胞の放射線傷害が拡大する可能性が考えられる。したがって放射線照射と非照射マウスに「担子菌抽出物」を継続投与し、血球細胞数、リンパ球のCD4およびCD8細胞数などの免疫に関連する項目の測定を経時的に実施する計画である。
さらに腫瘍の発育（抗腫瘍効果）との関連について検討する。
1.近交系マウス（BALB/c SPF, 雄/5週齢）の大腿部皮下にMeth-A（マウス肉腫）腫瘍細胞を移植し、X線の腫瘍局所照射による腫瘍縮小効果と担子菌抽出物」投与の関連を検討する。
2.担癌マウスの縮小効果を惹起させる最低照射線量（照射単独）を確定し、「担子菌抽出物」投与の効果を判定する。さらに、実験終了時に腫瘍の組織標本を作製して病理組織学的検討を行う。
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