がんに対する免疫療法では炎症が大きく関与するが、様々ながんの化学療法効果判定に用いられているFDG PETは炎症の影響を受けやすい。本研究では、がんに特異性の高いアミノ酸系の放射性薬剤F-18 fluoroboronophenylalanine (FBPA) を用いたPETについて、同時期に撮像したFDG PETと比較することで、免疫療法治療後早期での効果判定における実用性・有用性を検討した。 本年度は小動物モデルでの検討を総括し、結果を国際学会や論文で報告した。マウスにおける悪性黒色腫に対して抗PD-1抗体による治療を行い、治療前後にFBPAおよびFDG PETを用いて評価した。治療後早期に腫瘍はわずかな縮小傾向を示したが、同時期のFBPAおよびFDG PETでは、いずれも視覚的には治療群(治群)とコントロール群(コ群)を分別不可能であった。しかし、PET画像の定量的評価により、FBPA PETにおいて治群はコ群に比して弱い腫瘍集積を示すことが明らかになった。FBPA集積から求めた体積指標も、治群はコ群に比して小さな値を示した。一方、FDG PETでは治群はコ群と腫瘍集積、体積指標のいずれにおいても有意差なく、一部の集積指標では治群はコ群よりむしろ強い傾向があった。免疫組織化学染色では、FBPA、FDGの集積にそれぞれ関係するL-type amino acid transporter 1 (LAT1)、Glucose transporter-1 (Glut-1)はともに治療後にも腫瘍内に多く発現し、CD8などで評価した治療随伴性の炎症は比較的軽度であることが分かった。これらの結果は、FBPAおよびFDG PETの画像所見を裏付けるものであった。FBPA PETにより、がん免疫療法の治療後早期に効果を検出できる可能性があることが明らかとなった。
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