研究課題
本研究の目的は、Dual-Energy CTの組織物質弁別画像による血流・組織解析法を用いて肝細胞癌に対する分子標的薬の治療効果ならびに背景肝実質への影響を同時に評価することである。進行肝細胞癌に対してレンバチニブ投与予定の患者に対して、当院にて配備されているDual-Energy CT装置(Siemens社SOMATOM Force)を用いて治療前7日以内、治療後1ヶ月、2ヶ月後にダイナミック造影CTを施行した19名に対して画像評価を行った。撮像条件として、ファントム実験でヨード定量の安定性が高かった100kVと150SnkVの管電圧、reference mAs 240mAsの組み合わせで撮像を行った。ダイナミック造影CTとして体重あたり600mgIの造影剤を30秒間で静脈注入し、動脈相・門脈相・平衡相の撮像を行った。mRECISTで治療効果判定を行ったところ、1ヶ月後・2ヶ月後の奏効率はそれぞれ21%・37%であり、過去文献での奏効率40.6%と近い値を示した。一方でChoi criteriaで評価を行った場合には奏効率は47%・47%と上昇しており、mRECISTでの評価よりも早期に奏効が得られる症例が増えており、内部血流低下を鋭敏に検知できていることが証明された。また、動脈相のヨードマップで腫瘍内部のCT値を測定すると治療前36.9に対して1ヶ月後28.2、2ヶ月後19.6と減少していた。上記の結果から、少数例での検討ではあるがヨードマップで肝細胞癌内部のヨード値を測定することでレンバチニブの治療効果である腫瘍新生血管の阻害効果を適切に評価できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画として、①ファントム実験によるDual-Energy CT撮影プロトコールの設定、②分子標的薬治療における肝細胞癌血流ならびに背景肝実質性状の評価、を挙げていたが、ファントムを用いた当院における造影ダイナミックCT撮影プロトコルの設定ならびに切除不能進行肝細胞癌に対する分子標的薬治療予定の患者に設定されたプロトコールでDual-Energy CTによるダイナミック造影CTの撮影を行うことができており、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展しているものと判断した。
2019年度に引き続き,肝細胞癌に対する分子標的薬治療患者に対してDual-EnergyCT撮影を行い症例の蓄積,解析を進める予定である。目標予定症例数は80例であるが、1年目の集積症例数が19例であったことを踏まえると予定数の達成が不能となる可能性もあるため、状況に応じて関連施設を含めた多施設研究への移行も考慮する。
設備備品としてデュアルエナジー対応CT評価用ファントム(京都科学社製)を計上していたが、本年度は購入を行うことができず、当院に予め配備されていたCT評価用ファントムによってヨード定量精度の検証を行いプロトコルを設定した。今後、ヨードに加えて他の物質を含めた物質弁別解析の精度を検証することを検討しており、本年度生じた次年度使用額を利用して精度の高い人体模擬ファントムを購入して物理実験を行う予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (4件)
Hepatology Research
巻: 50 ページ: 15~46
10.1111/hepr.13438
European Radiology
巻: 30 ページ: 370~382
巻: 49 ページ: 981~989
10.1111/hepr.13394
巻: 49 ページ: 1109~1113
10.1111/hepr.13411
Liver Cancer
巻: 9 ページ: 63~72
10.1159/000502774