本研究では、近年撮像技術の改善により、ゆがみが少なく画質の改善が見られる空間分解能の高い拡散強調像に主眼を置き、造影剤を用いない乳房MRI検査により乳癌スクリーニングの診断能をあげていくことを目指した。乳癌検診に、検査時間短縮を図った非造影MRI検査をとりいれることで、どの程度乳癌の検出率が向上し、診断性能を向上させることができるか、低侵襲かつ客観的なエビデンスを築いていくことを目的とした。 MRI検査は全例3テスラMRIおよび16チャンネル乳房専用受信コイルを用いて行い、撮像の基本プロトコールは、T1強調・T2強調像水平断、高分解能拡散強調像(RESOLVE)で、高分解能の拡散強調像である”RESOLVE”の評価をADC 値を含め定性・定量的に行い、高分解能拡散強調像の有用性を検討した。 平成31(2019)年度から令和3(2021)年度に当院で撮像された乳腺MRI検査約330件のうち、後方視的に解析可能な症例の抽出を行い、造影MRI所見も参照し、乳癌検診にどういう形で拡散強調像を含むMRI検診を取り入れていくのが効率的であるかを画像所見と手術所見や病理所見とを比較し検討した。 造影ダイナミック検査は病変の検出に優れるものの、多くの良性小結節も検出されるため擬陽性率が高くなる一方、拡散強調像では悪性病変が明瞭な高信号を呈しADC値が低値となる傾向があるため、擬陽性率の減少に有用であると思われた。小病変の検出には高分解能の拡散強調像が通常の拡散強調像よりも優れているが、造影検査に比べると検出率は劣り、内部や辺縁性状の評価も難しいため、微小病変や非浸潤癌の検出・周囲への浸潤評価については非造影MRIのみでは難しいと思われた。
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