研究課題/領域番号 |
19K08201
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
芳賀 昭弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30448021)
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研究分担者 |
古徳 純一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (70450195)
中川 恵一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80188896)
今江 禄一 東京大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (80420222)
生島 仁史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90202861)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CT / エネルギースペクトル / 正規化 / 元素推定 |
研究実績の概要 |
腫瘍悪性度の分類や予後予測に対し、医用画像解析が遺伝子情報解析に匹敵する可能性が指摘され、レディオミクスと呼ばれる新たな研究分野が形成されつつ ある。一方、その予測精度を高めるために必要となる高品質で大規模な医用画像データベースの作成において、装置間の機器的な相違や撮影条件の相違が大きな障壁となる。本研究では、この問題の根本的な克服に向け、臨床で撮影される医用画像の多様性を利用して単一の医用画像撮影 プロトコルでは実現できない階層の情報抽出に基づいた正規化法を研究する。 当該年度研究期間内では、人体CT画像の正規化について、CT画像の効率的な表現方法とCT画像を特徴付けるX線スペクトル解析、およびCT画像から人体の電子密度・Stopping Power Ratioを求める新たな方法について研究を行った。CT画像の効率的な表現に関する研究では、特殊関数である球面調和関数やルジャンドル関数を用いて表現することで、のちにX線散乱等において応用しやすい形で効率化が図れることを示した。また被写体を通過するX線の情報やその情報を利用して得られるCT画像から、X線スペクトルを精度高く推定する深層学習モデルを作成した。そのX線スペクトル推定には、従来求めることが難しかったコーンビーム型のCT装置にも利用できることを示した。X線スペクトルを情報として、様々なエネルギーレンジのSingle energy CTもしくはDual energy CTから被写体の電子密度とStopping Power Ratioを求める際の精度も詳細に検討した。これらの成果は現在個別に論文にまとめ投稿中である。また、MRI画像、PET画像、超音波画像の医用画像についても正規化による予後予測・病気予測等の影響について、それぞれ単独での研究を行い、成果をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CT画像については、本研究課題で想定していたエネルギースペクトルの推定方法の開発とその情報を用いた人体画像の電子密度変換による正規化を実現できた。元素推定によるさらに高度な正規化も順調に進んでおり、2021年度に完成させる予定である。 超音波画像では、装置別のデータの前処理が終了し、装置間の画像変換を行う深層学習モデルの生成を進めており、これも2021年度に完成させる予定である。 一方、MRI画像では、装置間の画質を標準化させるのに十分なデータを得ることが難しく、先にMRI用の人体モデルを作成し、その人体モデルに応じた画像再構成法の検討を始めている。 CT画像については想定以上に進展しているが、MRI画像では使用する画像データの量に不足が見られるため、別手法の正規化方法の検討をしている点が全体の研究の進捗に遅れを来している。このため(2)のおおむね順調に進展している。に該当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、これまで本研究で進めてきたCT画像の正規化について、電子密度変換、有効電荷密度、および各種元素密度分布に関する研究をまとめ、論文化する。また、CT画像の正規化において本研究の特徴的なアプローチであるエネルギースペクトル情報を利用する手法を実用化するために、CT画像や投影データからエネルギースペクトルを推定する方法について論文化する。放射線治療領域で患者の位置照合に頻繁に使用されるコーンビームCT装置への拡張について検討を行う。一連の研究の鍵となるアイディアについては特許出願を進める。 その他の医用画像として、MRI、PET、超音波画像の研究も進めて論文にまとめる。MRI画像については、現在収集されたデータをもとに、仮想的なMRI用の人体モデルの生成を研究する。PET画像については装置の違いによる予後予測の精度への影響について検討する。超音波画像では、現在多くのデータが蓄積されつつあり、機種間・施設間の依存性を解消するための超音波画像正規化の深層学習モデルを作成・検証する。また、MRIにおける取り組みと同様に、仮想的な人体モデルの生成について検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展により次年度の研究規模が大きくなる予想のため、予算を一部(154,566円)を次年度に回した。
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