研究課題/領域番号 |
19K08203
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
荒木 不次男 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (00295148)
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研究分担者 |
大野 剛 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (20646971)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管内治療 / 皮膚線量 / 面積線量計 / モンテカルロ計算 / 被ばく線量 |
研究実績の概要 |
血管内治療(IVR)の被ばく低減に向けた皮膚線量モニタシステムの開発と体内線量分布の可視化を目的に,以下の項目を遂行した. (1) 各社IVR装置(Canon Toshiba, Philips, Siemens)の表面線量の直接測定 基準電離箱であるファーマ形電離箱によって比較校正した平行平板形電離箱を用いて,各社IVR装置の寝台に設定した水等価ファントムの表面線量の直接測定とIVR装置に内蔵された面積線量計の表面線量校正を行った.各施設でルチーンに使用されている腹部と頭部検査・撮影におけるmAs(電流×時間)当たりの表面線量と線質(Al 半価層)の関係を詳細に分析した.分析においては,線質指標として実効エネルギー/管電圧(kVp)の比であるQuality index(QI)をパラメータとして,Al半価層と表面線量の良い相関関係を明らかにした.結論として,QIが1に近く,半価層が高いほど表面線量は低下し,被ばく線量の低減に有効であった.また,線質に関係なく,入射空気カーマに比例して表面線量が増加することが明らかになった.面積線量計の表面線量校正については,現在まとめている. (2) 蛍光ガラス線量計(RGD)と光刺激蛍光線線量計(OSLD)の感度特性 IVRの患者皮膚線量測定を目的に,診断X線エネルギー領域におけるRGDとOSLDの感度特性をモンテカクロ計算と測定によって明らかにした.両検出器の感度は,QIをパラメータとしてX線ビームを分類することで,Al半価層と良い相関関係を示した.ただし,RGDとOSLDともAl半価層に依存して感度が異なるので,使用においてはAl半価層の測定が必要である. 以上の研究成果から,各社IVR装置の表面線量の定量的な評価が可能になった.本研究成果は,IVR の皮膚線量計測とIVRの被ばく低減のための最適な照射条件の設定に有用な情報を提供する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,新型コロナウイルス感染拡大のため研究計画通りにIVR装置の表面線量計測を遂行することができなかったが,論文として多くの研究成果を発表することができた. 結果としては,概ね研究計画通りに課題項目を遂行することができ,予定通りの研究成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果で,各社IVR装置の表面線量(皮膚線量)の定量的な評価と,X線エネルギー領域の各検出器(電離箱線量計,蛍光ガラス線量計,光刺激蛍光線線量計)の感度特性を明らかにすることができた.今後の研究展開として,各社IVR装置の皮膚線量の定量的な評価を引き続き行う.また,面積線量計による各IVR検査の皮膚線量の推定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,当初予定していた学会参加のための旅費が使用できなかったが,ソフトウエアの購入などの必要経費に充当した. 今後は,新型コロナウイルス感染拡大の状況次第ではあるが,学会発表時の旅費を含む経費や研究遂行のための物品購入などに充当する予定である.
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