研究実績の概要 |
血管内治療(IVR)の被ばく低減に向けた皮膚線量モニタシステムの開発と体内線量分布の可視化を目的に,以下の項目を遂行した. (1) 各社IVR装置(Canon Toshiba, Philips, Siemens)の表面線量の直接測定:平行平板形電離箱を用いて,各社IVR装置の寝台に設定した水等価ファントムの表面線量の直接測定を行った.各施設の腹部と頭部検査・撮影におけるmAs(電流×時間)当たりの表面線量と線質(Al半価層)の関係を詳細に分析した.分析では,線質指標として実効エネルギー/管電圧(kVp)の比であるQuality index(QI)をパラメータとして,Al半価層と表面線量の相関関係を明らかにした.その結果,QIが1に近く,半価層が高いほど表面線量は低下し,被ばく線量の低減に有効であった.また,表面線量は線質に依存せず,入射空気カーマに比例して増加することが明らかになった. (2) 各社IVR装置に内蔵された面積線量計を用いた表面線量の推定:面積線量計を測定した表面線量で校正し,腹部と頭部検査・撮影の各照射条件における表面線量を推定した.面積線量計はX線コリメータからの散乱の影響を受けるために,新たに照射野補正係数を導入し,各照射野の表面線量を線質に依存せずに推定することが可能になった. (3)検出器の感度特性:IVRの患者皮膚線量測定を目的に,診断X線エネルギー領域における電離箱線量計,蛍光ガラス線量計,光刺激ルミネセンス線量計の感度特性をモンテカルロ計算と測定によって明らかにした.各検出器の感度は,QIをパラメータとしてAl半価層と良い相関関係を示した. 以上の研究成果から,各社IVR装置の表面とファントム内での定量的な線量評価が可能になった.本研究成果は,IVR の皮膚線量及び深部線量計測とIVRの被ばく低減のための最適な照射条件の設定に有用な情報を提供する.
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