研究実績の概要 |
本研究は、加温により赤く呈色した溶液を透明にする反応メカニズムの解明を目的としている。本研究において、顆粒状の部分ケン化PVA 重合度500 ケン化度 86.5 mol%を用いて10 wt%のPVA 水溶液を用いて、質量パーセント濃度PVA 5.5 wt%、KI 9.1 wt%、ホウ砂3.6 wt%、果糖4.9 wt% からなるPVA-KI ゲルを作製し、作製したPVA-KI ゲルを光路長1 cm のPMMA 製ディスポセルに入れ、X 線照射装置を用いて吸収線量8Gy のX 線照射後,紫外・可視分光光度計のペルチェ温調システムを用いて照射試料を36 ℃に加温し,吸光度の時間分解測定を行った。490 nm(PVA・I3-錯体の吸収)と350nm(I3-の吸収)の吸光度の時間変について反応動力学的解析を行い 反応速度定数を決定した。本研究結果より、PVA KI ゲル線量計の特徴である 放射線照射後赤色に呈色したゲル線量計を加温に透明化し再利用性を持たせる反応の一端を解明した。本結果は、福井工業大学研究紀要 第50号, 97-102 (2020)において発表した。さらに、日本原子力学会, 2020年秋の大会, 講演番号1A08, オンライン, 2020年9月16~18日.「PVA-KIゲル線量計の反応メカニ,日本放射線化学会, 第63回放射線化学討論会において発表した。 また、本研究ではX線照射中のゲルによる光吸収をin situ測定(その場測定)するシステムを構築し、2Gy未満の測定を行い吸収線量域における特性を明らかにすることを試みた。本研究結果から、0.25Gy間隔でのin situ測定が可能となり、低線量領域や非常に狭い線量範囲でのより精密なデータ取得が可能となった。本結果は、日本原子力学会, 2021年春の年会で発表した。
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