研究実績の概要 |
2020年度の研究は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、各種制限により研究内容を一部変更して実施した。2019年度は、DNAレベルの幾何学的構造の違いによる一次放射線による影響を中心として調査・検討を行ったが、本年度は組織レベルの組成の違いによる影響および一次放射線と組織(媒体)との物理作用(核破砕)の結果生ずる2次放射線による寄与について検討を行った。
1)組織の違いによる影響検討 水(標準媒体)、筋肉、肺臓、骨の4種類に対し放射線を照射することによる2放射線の生成および生体への寄与について検討した。光子線では媒体の違いによる影響は殆ど見られず、肺臓のみ密度変化による飛程(透過率)の違いが確認出来た。一方、炭素線では光子線ではほとんど違いが生じなかった水と筋肉の間でも明確な変化を確認出来た。 2)2次放射線の生成に関する検討 光子線においては、今回評価に使用した媒体が低原子番号元素であったため、中性子のような2次放射線は確認できなかった。なお、比較評価として実施した、治療構造物(治療器具、コーチなど原子番号構造物)では中性子線の発生が確認できた。炭素線に関しては、各種2次放射線(p,H,He,Li,Be,B)の生成が確認された。また、媒体による2次放射線の生成・挙動に大きな違いを確認出来た。一方、炭素線ではH, He, Li, Be, Bの様々な2次放射線が確認でき、1)の媒体の違いと合わせた評価では媒体の違いによる2次放射線の挙動等にも大きな違いを確認出来た。
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