研究課題/領域番号 |
19K08222
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 博元 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (00707648)
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研究分担者 |
大江 一弘 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (90610303)
佐々木 一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任技術員(定常) (60817477)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アスタチン-211 / α線 / ネオペンチル構造 / 腫瘍低酸素領域 / ニトロイミダゾール / 脱ハロゲン / 放射性ヨウ素 |
研究実績の概要 |
前年度は生体内安定なプロトタイプ化合物の設計を基に、腫瘍集積量の改善を目的として2分子の水酸基をジメトキシ化することで脂溶性を向上した候補薬剤を設計、合成し、放射性ヨウ素標識体による評価を行った。2分子の水酸基の修飾はCYPによる酸化的脱ハロゲン化に対する安定性の低下につながることが懸念されるが、ジメトキシ体では細胞内に取り込まれた後、プロトタイプ化合物へと代謝されることで安定化されることが期待できる。実際、放射性ヨウ素標識体ではプロトタイプ化合物には劣ったものの十分な生体内安定性を示した。本成果を基に候補薬剤の低酸素標的薬剤としての有用性を引き続き評価した。まず今年度は211At標識体の生体内安定性を検討した。その結果、放射性ヨウ素標識体と同様、プロトタイプ化合物よりも安定性の指標となる胃への集積量が増加したものの、既存の薬剤と比較して低値であった。治療薬剤としての応用が可能な生体内安定性を確認できたことから、次いで担癌マウスに放射性ヨウ素標識体を投与し、腫瘍集積量を検討した。しかし、2分子のメトキシ基を導入した候補薬剤の腫瘍集積量はプロトタイプ化合物と比較して同程度であり、腫瘍集積を改善できなかった。本結果を受けて、速やかに代謝安定化される設計では、腫瘍集積量を改善することは困難と考察した。そこで、生体内安定性に必要となる水酸基への修飾を加えず、ニトロイミダゾールとネオペンチル標識部位との間に種々のリンカーを導入することで脂溶性を調整する戦略を新たに進めている。候補薬剤の一つは合成を終え、放射性ヨウ素標識体を用いて正常マウス体内動態を評価し、高い生体内安定性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に導出した候補薬剤の腫瘍集積が低値であったことから、薬剤設計の再考が必要となった。現在、複数の候補薬剤の合成、評価を新たに実施していることから、当初の実験計画からやや遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、生体内安定性に必要となる水酸基への修飾を加えず、ニトロイミダゾールとネオペンチル標識部位との間に種々のリンカーを導入することで脂溶性を調整する戦略を新たに進めている。種々の候補薬剤について、放射性ヨウ素標識体を作製し、生体内安定性と腫瘍集積量を評価する。最も優れた体内動態を示した薬剤を用いて、211At標識体による検討を進める。
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