本研究では陽子線による膵癌の治療成績向上を目指して、4次元CT画像を使った呼吸性移動に対してロバストな(呼吸性移動の影響を受けにくい)強度変調陽子線治療(IMPT)の治療計画の最適化アルゴリズムとして4次元ワースト・ケース・シナリオ・アルゴリズムを開発する。IMPTの治療計画における最適化は数理工学における最適化問題に帰着できるが、呼吸性移動に対してロバストな最適化アルゴリズムを開発し、それを膵癌の治療計画に用いることで、粒子線を用いた膵癌の治療ではどこまで線量集中性を高め、治療成績の向上が見込めるかが本研究で問おうとする課題である。 これまでに動的なビーム照射の時間構造と標的の動きの相互干渉の効果、いわゆるインタープレイ効果を考慮して線量分布を最適化する部分の開発を行い、水ファントムを模擬した数値ファントムデータを用いて検証した。最適化アルゴリズムとしては準ニュートン法であるBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno(BFGS)法を採用し、C++言語によるコンピュータプログラムとして実装した。膨大な計算を実用的な時間で行うためにグラフィックス プロセッシング ユニット(GPU)を使った並列計算によって解決した。また、2021年度にはリアルタイム粒子線治療と適応放射線治療に関する国際共同研究として治療計画における呼吸移動対策の調査を行った。最終年度においてはこれらの成果を統合し、臨床に利用可能なシステムを構築するための調査と検討を行った。
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