研究課題/領域番号 |
19K08233
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
赤澤 健太郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50547784)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 出生体重児 / 発達予測 / 画像バイオマーカー / 拡散尖度画像 |
研究実績の概要 |
低出生体重児は、主要神経学的障害を合併しない児であっても、学童期に行動異常や学習障害などの頻度が高いことが指摘されており、早期介入の必要性の高い児を同定するための画像バイオマーカーの開発の研究を継続した。 具体的には、まず脳細胞単位の微細構造および機能に着目した神経線維のintegrityを評価するために、160に及ぶ脳の解剖学的構造単位、および機能に関わる左右26種の神経線維の描出を安定的に行う方法を確立した。 上記の2種の方法を用いて、当初は低出生体重児の脳の微細構造、integrityのパラメータである、Fractional Anisotropy(FA)、Trace値、Mean Kurtosis(MK)を取得する予定であったが、これらに加え新しい撮像方法であるNODDI(Neurite Orientation and Dispersion and Density Imaging)の撮像および解析方法の確立を行った。これは、非正規分布拡散画像の後処理の手法で、ワトソン分布という数理モデルを用いて、脳内の微細構造を、細胞内の制限拡散、細胞外の阻害拡散、そして脳脊髄液成分の自由拡散の3つのコンパートメントに分けて解析する手法となる。この手法において、神経突起散乱(ODI:Orientation Dispersion Index)、神経突起密度(ICVF:Intracellular Volume Fraction)、脳脊髄液(ISO:Isotropic Volume Fraction)の画像が得られる。NODDIの撮像において、前述のFA、trace値、MKを同時に算出可能であるため、児への負担が過剰に増えることは避けられる。 これら先進的拡散強調画像を用いて、児の撮像を実施し解析を行う準備を整えるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本学附属病院の周産期NICUの病棟改修工事が、令和2年3月中に終了し、令和2年度に周産期NICUが稼働する予定であった。しかしながら、COVID-19の蔓延に伴い、京都府における唯一の第一種感染指定医療機関である当施設では、その責務を果たすべくCOVID-19感染患者の受け入れのため、病院の体制変更が行われ、本来4月から再稼働であったNICUが2か月延期となった。さらにCOVID-19感染対策や感染患者受け入れなどによる体制変更が継続するなどにより、母体の受け入れも減少し、対象となる児の撮像をほとんど行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
周産期診療部の医師とは良好な研究協力体制を確立しており、徐々に対象となる児の撮像が行われており、これを継続していく。 また当施設では、これまで低出生体重児の出産を多く受け入れ、term equivalent ageのタイミングならびに1歳児にMRIが撮像されている。また定期的に発達検査が行われている。これらの症例の拡散強調画像を用いて、160に及ぶ脳の解剖学的単位および機能に関わる左右26種の神経線維を関心領域として、各パラメータの値と発達検査の相関を検討し、3年後の発達を予測するバイオマーカーの開発に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延により、予定されていた海外学会がweb開催となり、旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じることとなった。 数十例に及ぶMRIデータとその解析データを一度に読み込み、解析、描画を行うためには、ハイスペックのPCが必要であり、その購入に使用する予定である。
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