研究実績の概要 |
深いニューラルネットワークを使って機械学習を行う深層学習が広範な分野で目覚ましい成果を挙げており,特に近年U-NetやGANなど,画像を異なる種類の画像へ変換する,または新しい画像を生成する技術の研究開発及び応用が進んでいる. 一方で脳卒中の診療における意思決定においては脳血流量(CBF)や酸素代謝などの脳循環パラメータが有用であり,PET, MRI検査でそれらを取得することができる.しかし,当該検査は特殊な撮像機器を要する,撮像時間が長い,被検者に対する負担が大きいなどの問題がある. 本研究課題では被検者への負担が少ない簡便な脳循環評価法の提案・開発を目的とし,MR画像をベースとした深層学習による脳循環画像の予測・生成を試みる. 前年度までにMR画像のみでの酸素摂取率(OEF)画像の予測は困難であるが,PET検査で得た安静時脳血流量(CBF), 脳血液量(CBV)の画像を入力として加えることで,OEF画像の予測に成功していた.当該年度においてはさらなる精度改善のために負荷時CBF(sCBF)画像を追加しての予測を試みた.その結果,MR, CBF, CBV, sCBF画像全てを入力とした場合に最も実際のOEF画像に近い画像が予測できることが判明した [OEF定量値の一致度(ICC): 0.597 +/- 0.082].またMR画像と安静時CBF画像のみでも同等の一致度での予測が可能であることが判明した [ICC: 0.574 +/- 0.079].これらの結果から,OEF画像やCBV画像を取得するための15O-CO, 15O-O2ガスによるPETスキャンを省略できる可能性が示唆された. 今後さらなる精度改善のためにはよりサンプルサイズの大きいデータでの学習やネットワークの改善が必要である.
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