本研究は1) 臨床検体を用いたMV測定、2) 実験的子宮内感染モデルの確立とMV測定、3) 高酸素下における好中球由来MVの役割を主な目標としていた。気道由来の臨床検体採取を目的とした多施設臨床研究計画については、コロナ禍における移動制限や気道由来検体の取り扱いに関する手順整備に時間を要する点があるため、本プロジェクトは大きな計画変更を余儀なくされた。そのため、止む無く計画の方向性を「酸化ストレスに伴う」小児科疾患における、血液検体を用いた好中球由来MVの役割という観点で見直し、異なる角度からの研究進捗を図った。成育医療研究センター移植外科と共同で、血液検体を用いた小児急性肝不全の研究プロジェクトを立ち上げ、マウスとヒトにおける好中球由来MVの意義についてのproof-of-conceptを得られた。加えて、研究用ヒト血液製剤を用いた、体外循環の影響も継続的に調べながら、各細胞由来のMVの役割を解明するために、得られたMVの精製手法にも取り組んだ。 その他にも本プロジェクトでの発見をベースとして、ECMO回路におけるMV産生、小児手術におけるMV数の推移、といった発展的研究が計画され、現在準備を進めている。 今年度も新型コロナウイルスのパンデミックは留まることを知らなかった中、成人を中心とした集中治療室における責任者として各種診療体制整備を進めていた研究代表者の臨床・管理業務は多忙であった。しかしながら、増員した研究チームメンバーの尽力によって、本研究は新たな発展的展開へ向けた道筋がつけられた上で期間終了となった。
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