研究代表者の研究室で作製・維持されているAshed-X欠損マウスを用いて、脂肪組織とその周囲に浸潤する免疫細胞を解析し、組織炎症の有無や程度を評価した。SPF環境下にて飼育しているAshed-X欠損マウスでは、少なくとも20週までは正常に発育し、脂肪組織の炎症はみられなかった。また、脾臓や リンパ節の大きさ、浸潤免疫細胞数もコントロールマウスとほぼ同等であり、明らかな炎症の兆候は認められなかった。 また、高脂肪食を与えた肥満炎症誘導環境下にて、脂肪蓄積時の組織炎症の有無を評価したところ、生後8週から20週まで高脂肪食を与えたAshed-X欠損 マウスは、コントロールマウスと類似した体重増加曲線を描き、有意な差は認められず、浸潤免疫細胞にも有意な差は認められなかった。しかしながら、脂肪組織中におけるサイトカイン・ケモカインの発現を評価したところ、Ashed-X欠損マウスでは、Cxcl9およびCxcl10の発現がコントロールマウスと比べ有意に増加していた。 さらに、LPS誘導性の脂肪炎症を検討したところ、Ashed-X欠損マウスでは、皮膚の肥厚が有意に弱く、皮膚炎症の面積も小さい傾向にあることがわかった。皮膚炎症組織を用いたHE染色においても浸潤免疫細胞の増加は認められなかった。 以上の結果より、若齢のAshed-X欠損マウスでは炎症誘導時に組織炎症の増悪は認めなかったが、少なくもと二つのケモカインが脂肪組織の炎症誘発に関与している可能性が考えられた。
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