本研究は、てんかん発症患者の約 3 割を占める難治性てんかんの一種であるドラベ症候群に着目している。乳児期に発症するドラベ症候群では、病態発現に伴う中枢神経細胞の神経細胞間情報伝達変化は、未だ不明確である。本研究では、本疾患における病態発現に伴う中枢神経情報伝達変化を体系的に明らかにする研究である。 乳児期に発症する難治性てんかんとして知られているドラベ症候群の発症は、電位依存性Na+チャネルの機能不全が関与していることが示唆されている。具体的には、中枢神経で主要な抑制性神経系であるGABA作動性神経に発現していると考えられている、Nav1.1のαサブユニットをコードするSCN1A遺伝子の変異により電位依存性Na+チャネルの機能不全が起こっていることが示唆されている。しかしながら分子生物学的解析により、チャネルの変異に基づく機能不全の可能性は示唆されていても、GABA放出機構やシナプス後細胞に発現しているGABAA受容体機能など、神経細胞間情報伝達に関与する機構が、病態発現に伴いどの様に変化しているのかはいまだ不明である。 本年度における本研究では、これまで得られている神経細胞間情報伝達系の電気生理学的解析に基づき、抑制性神経のみならず興奮性神経の情報伝達に着目して解析を行った。具体的には、抑制性ならびに興奮性神経伝達の発達変化、病態発現時の変化について電気生理学的に解析を行った。本研究では、培養細胞を用いた発達に伴う細胞間情報伝達の変化に関する解析を多方面より行い体系的に明確にしていくことを計画していたが、マウスを使用した電気生理学的解析を主体に解析を行っている。
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