研究実績の概要 |
骨肉腫の転移機構を解明するために、肺転移マウスモデルを確立し、原発巣・転移巣のそれぞれの遺伝子発現の比較解析を行った。具体的には、免疫不全マウスの脛骨に143B細胞を投与し5週後に脛骨腫瘤と両肺を採取した。採取組織を破砕しFCMで143B細胞株に高発現しているCD29, CD105でソーティングし骨肉腫細胞を回収しRNAを抽出した。また骨肉腫2名の骨肉腫原発巣と肺転移巣からRNAを抽出し、トランスクリプトーム(RNA-seq)を行うことで2つのモデルで共通して肺転移巣で高発現の遺伝子を骨肉腫の肺転移を促進する候補遺伝子とした。まずは上位10個でsgRNAを作製し、レンチウイルスベクターで143Bに導入し当該遺伝子欠損骨肉腫細胞株を樹立した。Real-time PCRで発現低下を確認し、確実に遺伝子欠損がなされていることを確認した上で、in vivoで肺転移抑制効果を示すかを証明するためにNOGマウスに接種した。接種後4週目にCTならびに組織学的に肺転移を評価した。今回の9遺伝子でコントロールと比較して肺転移抑制効果を見出せなかったが、1遺伝子が治療標的になる可能性があり、再現性を確認するために接種マウスを増やして確認中である。さらに上位11から20位にあたる追加の10遺伝子のsgRNA作製、NOGマウスへの接種、転移巣評価を解析中である。標的遺伝子が同定されれば、その後は、患者検体で候補遺伝子の発現解析を行い臨床情報と統合し評価していく。また、新規患者検体についてはpatient-derived xenograft (PDX)マウスを作製し、PDXマウスおよび骨肉腫細胞株143B xenograftで各種阻害剤を投与する。接種後4週目にCTで肺転移を評価し肺転移が有意に抑制された阻害剤・抗体薬については新規肺転移抑制治療薬として特許取得を目指す。
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