先天性副腎低形成症を有する3症例において遺伝子A内の特定領域に微細欠失を同定した。本研究課題では、この遺伝子Aの特定領域を欠失した疾患モデルマウス(副腎低形成を想定)を作製する。作製した疾患モデルマウスの表現型、罹患組織(副腎・性腺)を病理組織学的および分子生物学的に解析し、遺伝子Aの副腎皮質発生・分化における役割および特定領域欠失による副腎皮質発生・分化障害のメカニズムを明らかにすることを目標としている。 前年度までに生殖細胞系列に遺伝子Aエクソン2欠失をヘテロ接合性に有するマウス(ヘテロ欠失マウス)を作製・交配し、生殖細胞系列にエクソン2欠失をホモ接合性に有するマウス(ホモ欠失マウス)を獲得した。当該年度では、ホモ接合性マウス(Δ2)の週齢6までの体重と生存率、日齢0・週齢6での副腎機能、副腎サイズ、副腎組織像、副腎遺伝子発現を同胞かつ同性の野生型マウス(WT)と比較した。ホモ欠失マウスは野生型に比較し以下を示した。1)体重増加不良をきたし、半数以上が週齢1以内に死亡した。週齢3以降は死亡率が低下した。2)死亡例において鼻腔内嗅上皮の空胞変性・アポトーシス、線毛細胞の減少を認めた。3)血中ACTH、corticosteroneに有意差はなかった。4)副腎は腫大し、束状層過形成と髄質細胞の皮質内への分散に加えて、皮質内側に大型の核を持つ細胞群を認めた。5)副腎の免疫組織染色でAkr1c18陽性細胞はみられず、βカテニン陽性細胞はWTと同様であった。以上より、遺伝子Aのエクソン2はWnt-βカテニン経路非依存性にX-zoneの分化に関わると考えられた。
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