研究課題/領域番号 |
19K08264
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
稲津 哲也 立命館大学, 薬学部, 教授 (00242587)
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研究分担者 |
田中 輝幸 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10246647)
片山 将一 立命館大学, 薬学部, 助教 (60779049)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CDKL5 / 抑肝散 / 神経分化 / 細胞内情報伝達 |
研究実績の概要 |
抑肝散は7種類の生薬を含有し、多数の有効成分を含有する。そのため、抑肝散に含まれる化合物の中には神経分化に対し促進作用を持つ化合物と、同時に抑制効果を持つ化合物も含まれると考えられる。研究開始初年度には、抑肝散に含まれるセンキュウ、チョウトウコウ、ソウジュツ、ブクリョウ、トウキ、サイコおよびカンゾウより、生薬の一味抜き(7つの中から1つの生薬を抜くこと)のエキス計7種類をそれぞれ作製し、それらの作用をビタミンA存在下で神経分化が誘導される胎性がん細胞のP19細胞をモデル細胞として用いて検討した。抑肝散と一味抜き成分でその細胞の神経分化誘導させることができた。すなわちカンゾウ抜きとサイコ抜きの成分にて、NeuNの神経マーカー発現上昇を測定して神経分化誘導作用の減弱効果を見出した。すなわち、これらの2つの成分中に神経分化誘導作用成分が含まれている可能性があることを見出した。さらにその2成分中の多数の有効成分の中のどの成分が有効であるかを見るため、グリチルリチンとサイコサポニンに焦点を当てて効果を検証し、この成分中に神経分化誘導作用を見出した。さらに神経分化促進作用の再現性の確認、並びにNeuNの発現や神経突起長などのマーカーを目処に検討した。またその成分の薬理作用点を見出すために、細胞内シグナル伝達(特にmTOR,PDK1シグナル)を中心として作用機構を解析することに着手し、あるシグナル分子に影響を与えることを見出している。 また抑肝散をマウスに経管投与し、確実に抑肝散濃度が上昇することを確認し、予備実験を終了している。さらにcdkl5ノックアウトマウスにこの生薬を投与し、空間学習能の改善効果等行動実験を終了した。その後のデータを今後解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎性がん細胞で神経分化作用を有するP19細胞をモデルとして、抑肝散の一味抜き成分で神経分化誘導させた。その結果、グリチルリチンやサイコサポニンの成分が、神経分化作用を示す可能性が高いことを見出し、再現性を確認した。さらにその作用機構の一部の分子が影響を受けていることが判明した。また、抑肝散をマウスに経管投与し、確実に抑肝散濃度が上昇することを確認し、予備実験を終了した。さらにcdkl5ノックアウトマウスに抑肝散を投与し、空間学習能の改善効果等を含む一連の行動実験を終了した。今後、詳細にデータを解析する予定である。そのため、今年度はおおむね順調に研究が進んだと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
抑肝散の7生薬のうち、カンゾウとサイコの成分の神経分化促進作用の再現性のさらなる確認をNeuNの発現や神経突起などのマーカーを目処に検討する。その成分の作用機序を調査するために、細胞内シグナル伝達(特にmTOR,PDK1シグナル)を中心に出来るだけ網羅的に調査する。それらを媒介として神経系の分化に関与するかどうかを、詳細に検討するため、阻害剤やRNAi等を使用し検討する予定である。さらにcdkl5ノックアウトマウスにおける、抑肝散の効果をデータ解析し検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、全般的に研究が滞っていた時期がある。そのために研究費の使用が遅れていた。しかし2021年度には、ほぼその計画は達成できたので、今後はそれらの研究を着実に進めることから、研究費を使用できるものと思われる。
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