研究実績の概要 |
我々は新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットにラット臍帯血幹細胞を移植するというラット同種移植系を用いて、臍帯血幹細胞が周生期脳障害を軽減させることを報告してきた。本研究では、臍帯血幹細胞の特性や周生期白質損傷に対する臍帯血幹細胞の効果について検討することを目的としている。 今年度は臍帯血幹細胞の糖鎖組成について検討した。コンドロイチン硫酸(CS)やへパラン硫酸(HS)などの糖鎖は様々な組織の細胞外マトリクスとして存在し、成長因子等と結合することにより細胞の分化・増殖に関与することが知られている。ラット胎仔臍帯血より有核細胞層を分離増殖させ、幹細胞リッチな細胞群(Stem cell enriched umbilical cord blood cells; SCE-UCBC)を得た。この細胞群のCS,HS糖鎖分析を行ったところ、HS含有量に比較してCS含有量が多いことがわかった。CS糖鎖は二糖の繰り返しに硫酸基のついた構造をしているが、その硫酸基の位置や数によりO-, A-, B-, C-, D-, E-unitに分類される。SCE-UCBCのCS鎖はA-unitを多く含むことがわかった。また、Colony forming cell assayを行ったところ、CS糖鎖分解酵素処理によりコロニー形成細胞の割合が減少した。以上のことから、臍帯血幹細胞にもCS、HS糖鎖が存在すること、CSは臍帯血幹細胞の増殖・分化などの生物学的機能に関与している可能性があることが示唆された。
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