研究課題/領域番号 |
19K08271
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
守田 雅志 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (20191033)
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研究分担者 |
宗 孝紀 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (60294964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 副腎白質ジストロフィー / ABCD1 / ペルオキシソーム / ミクログリア / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
本研究計画は副腎白質ジストロフィーの発症機構を解明し、将来的な発症抑制薬の開発に繋げることを目的としている。本疾患は大脳における炎症性の脱髄を呈する難治性の疾患で、その発症メカニズムは未だ不明である。2019年度は本疾患の原因タンパク質ABCD1の機能欠損による自然免疫応答とコレステロール代謝異常に着目し、研究を行った。 Abcd1欠損マウスから分離培養したミクログリアについて、LPS及びnigericin処理を行い、NLRP3インフラマソームを活性化した結果、IL-1bの産生量が野生型に比べabcd1欠損ミクログリアで高く、abcd1欠損ミクログリアはより活性化された状態であると推察された。また、Abcd1欠損ミクログリアでは野生型に比べ、IL-4刺激によるM2型への分極の割合が減少していることを明らかにした。さらに、abcd1欠損マウス脾臓から分離したCD4陽性T細胞について、エフェクターT細胞への分化の違いを解析した。IL-12の添加でTh1細胞に分化誘導したところ、Abcd1欠損CD4陽性T細胞でIfng遺伝子の発現が野生型に比べて高い傾向が確認された。一方、IL-4添加でTh2細胞に分化誘導したところ、Abcd1欠損CD4陽性T細胞でIl4の遺伝子発現が低い傾向が確認された。以上の結果から、Abcd1欠損CD4陽性T細胞は野生型と比較し、Th1/Th2バランスがよりTh1に傾いていると推察された。 一方、Abcd1遺伝子やPex19遺伝子を欠損したHeLa細胞を作製し、コレステロール代謝について解析を行った結果、Abcd1欠損やペルオキシソーム欠損した細胞では、リソソームへの遊離コレステロールの蓄積など、細胞内コレステロール代謝に異常が認められた。 これらの結果は、Abcd1機能欠損によるコレステロール代謝と炎症応答との関連性を解析する上で重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、abcd1欠損ミクログリアのインフラマソーム活性化機構について明らかにすることを目的に実験を行い、abcd1欠損ミクログリアでIL-1bの産生量が高いことや、M1/M2ミクログリアの分極の違いについても知見が得られ、順調に進んでいる。本年度はミクログリアに加えて、CD4陽性T細胞でのabcd1欠損による炎症反応の違いについても解析を行ったため、当初計画していたabcd1欠損マウスを使用したin vivoの実験でのインフラマソーム活性化ついては、まだできていないが、今後の結果を踏まえ解析する予定である。 また、コレステロール代謝との関連性については、作製したモデル細胞株を用いることにより解析を行い、abcd1欠損やペルオキシソーム欠損により細胞内コレステロール代謝に異常が起こっていることを確認した。自然免疫応答との関連性については、現在解析中であり、概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
Abcd1欠損ミクログリアにおいて、インフラマソームの活性化やM1/M2型への分極の違いが起こっていることが明らかとなった。abcd1欠損マウスからの初代培養ミクログリアを使用する実験では、マウスの個体差があることや培養が長期になることから、今後はCrisper/Cas9システムによりABCD1遺伝子やPEX19遺伝子を欠損させたヒト免疫担当細胞(マクロファージ系細胞)を作製し、研究を進める予定である。モデル細胞の調製によりコレステロール代謝の異常と自然免疫応答の亢進との関連を詳細に解析することが可能となる。また同時に個体レベルでの解析も行う予定である。
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