研究課題/領域番号 |
19K08272
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大嶋 勇成 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (40303391)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / ナノ粒子 / アジュバント / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
食物アレルギーに対する免疫療法が検討されているが、未だ有効性・安全性に優れた方法は確立されていない。食物アレルギーの発症には経皮感作が関与し、皮膚の炎症が誘発症状の増悪因子と成り得ることから、経皮免疫療法には、皮膚の炎症を回避し、抗原を投与する必要がある。本研究では、ナノ粒子を利用して制御性細胞を誘導することで免疫寛容を誘導する免疫療法の開発を目的とし、以下の検討を行った。 オボアルブミンOVAを経皮感作させた後、OVAの経口チャレンジにより食物アレルギーを発症させたマウスに、OVAを封入させたPoly(d,l-lactide-co-glycolide)(PLGA)で作成したナノ粒子を皮下投与することで免疫療法を行った。ナノ粒子による皮下免疫療法では、アナフィラキシーは誘発されないが、その後のOVA経口チャレンジにより誘発させる食物アレルギー症状は増悪することが確認された。この結果は、ナノ粒子単独投与による皮下免疫療法は食物アレルギーの治療には使えないと考えらえれた。 OVA封入ナノ粒子の塗布による免疫療法では、食物アレルギー症状の抑制効果が弱いことから、炎症性サイトカインのシグナル伝達阻害剤一つであるJAK阻害剤のアジュバント効果を検討した。その結果、JAK阻害剤とナノ粒子の同時塗布は、血清中OVA特異的IgG1値には影響はなくIgG2aの産生が選択的に抑制されることが明らかとなった。JAK阻害剤がナノ粒子の免疫効果を修飾する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経皮免疫療法のアジュバントとして、IgEの抑制を期待してJAK阻害剤の効果を検討したところ、液性免疫応答における抗原特異的IgG1は抑制せず、IgG2aの産生が抑制されることが判明したことから、アレルギーに対する免疫寛容誘導のための免疫療法用アジュバントとしてよりも、その作用機序を解明することで、感染症に対する予防接種用のアジュバントとしての応用が考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
JAK阻害剤をアジュバントとして用いた場合の作用機序を解明するため、皮膚における炎症性サイトカインの発現パターンを明らかにする。制御性T細胞や濾胞性T細胞のサブセットの偏移が生じていないかを検討する。 また、経口抗原曝露時に反応する腸管粘膜および腸間膜リンパ節のT細胞サブセットの変化とその機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ粒子の投与経路の変更や、アジュバント作用を示す阻害剤のスクリーニングを主体とした予備実験を中心に実施したことから、実験のサンプルサイズを制限していたため消耗品の支出が抑制された。検討対象とする阻害剤が確定したため、再現性確認のための実験に使用する消耗品に充てる
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