研究実績の概要 |
食物アレルギーに対する免疫療法が検討されているが、未だ有効性・安全性に優れた方法は確立されていない。食物アレルギーの発症には経皮感作が関与し、皮膚の炎症が誘発症状の増悪因子と成り得ることから、経皮免疫療法には、皮膚の炎症を回避し、抗原を投与する必要がある。本研究では、抗原を封入したナノ粒子や皮膚の炎症抑制作用を有する薬剤をアジュバントとして経皮投与し、制御性細胞を誘導することで免疫寛容を誘導する免疫療法の開発を目的とし、Balb/cマウスにMC903をアジュバントとしてオボアルブミンOVAを塗布することで経皮感作させた後、OVAの経口チャレンジにより食物アレルギーを発症させたマウスを利用して以下の検討を行った。 脂肪酸エステルの2-Ethylhexyl Palmitateに界面活性剤を加えたW/Oクリーム基材にOVAのPBS溶液を懸濁しナノサイズの液滴を分散させたものを皮膚に塗布すると、OVAのPBS溶液を塗布する場合に比べ、皮膚症状を誘発することなくOVAを皮膚に塗布投与できたが、経口チャレンジによる誘発症状は抑制されなかった。 OVAを封入させたPoly(d,l-lactidecoglycolide)で作成したナノ粒子を皮下投与する免疫療法では、アナフィラキシーは誘発されないが、経口チャレンジによる誘発症状は増悪した。 アジュバントとしてタクロリムスをOVAとともに皮膚に塗布した場合、経口チャレンジによる誘発症状は増悪した。JAK阻害剤をOVAとともに皮膚に塗布した場合、有意な抑制効果は認めなかったが、血清中OVA特異的IgG2aの産生が選択的に抑制され、JAK阻害剤がナノ粒子の免疫効果を修飾する可能性が示唆された。
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