研究課題/領域番号 |
19K08276
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小垣 滋豊 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (00311754)
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研究分担者 |
岡嶋 孝治 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70280998)
石田 秀和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50467552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 原子間力顕微鏡 / 粘弾性 / 肺血管拡張薬 |
研究実績の概要 |
脳死肺移植の際に摘出された肺動脈から確立された肺血管平滑筋細胞について、原子間力顕微鏡を用いて、その粘弾性測定を行った。実験に使用する細胞は継代数としては6~10までとした。細胞は10cm径の細胞培養ディッシュで、80%コンフルエントまで育てた後、A原子間力顕微鏡計測用のマイクロアレイ基盤の上に播種した。その翌日に培地に各種薬剤を添加し、8時間培養した後、原子間力顕微鏡での計測を行った。薬剤としては、現在臨床現場で肺高血圧患者に使用されている薬剤を使用した。まずは、代表的なホスホジエステラーゼ5阻害薬であるシルデナフィルを用いて実験を行った。まず、肺高血圧症患者由来肺血管平滑筋細胞では、粘弾性の高い細胞群とほぼ正常の細胞群との2群が認められた。シルデナフィルの添加により、粘弾性の高い細胞群の数は減少することが確かめられた。次に、代表的なエンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタンを用いて実験を行った。マシテンタンの添加によって、同様に粘弾性の高い肺血管平滑筋細胞の割合は減少した。すなわち、作用機序の異なる肺血管拡張薬でも同様の肺血管平滑筋細胞の性質の変化が誘導されることが確かめられた。さらに、近年新しく開発されたcGMP賦活薬であるリオシグアトについても同様の実験を行った。これについても、リオシグアト投与によって、肺血管平滑筋細胞の粘弾性が低下し、効果があることが示された。これらの薬物の投与により特に細胞の障害性は認められず、粘弾性以外の細胞挙動についての変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、肺血管平滑筋細胞を用いた原子間力顕微鏡による粘弾性測定は進行している。また、薬剤添加によって、当初期待した通りの薬効の確認は行えている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床現場では、これらの肺血管拡張薬は単剤で用いられることは少なくなり、近年ではガイドラインにおいても、より早期からの積極的な多剤併用療法が勧められている。したがって、今後は上記で用いた薬剤を複数で組み合わせることで、より有効性が認められるのかどうか、低い添加濃度で同様の効果が得られないかどうか、あるいは逆に複数薬剤によって効果や細胞の挙動に悪影響が出ないかどうかなど、組み合わせを変更しながら検証していく予定である。
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