研究課題/領域番号 |
19K08277
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
塚原 宏一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90207340)
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研究分担者 |
宮原 宏幸 岡山大学, 大学病院, 医員 (00807654)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 活性酸素 / 活性窒素 / 内因性NO合成酵素阻害因子 / 多臓器障害 / 急性腎障害 / 集中治療 |
研究実績の概要 |
酸化ストレスは, 内部・外部刺激により生体内で活性酸素群(活性窒素も含む)が抗酸化システムで捕捉しきれないほど過剰に生じる状況である。酸化ストレス亢進は血管内皮障害と深く関連する。とりわけ, 血管内皮での一酸化窒素(nitric oxide: NO)生成は生体のレドックス環境を保持するうえで必須である。 酸化ストレス亢進はarginineを基質とするNO合成を抑制し, 内因性NO合成酵素阻害因子であるasymmetric dimethylarginineの生成を刺激する。 小児の急速進行性疾患, 慢性遷延性疾患ではしばしば酸化ストレスが増幅され, 生体の構造や機能が酸化劣化を受けて, 組織障害が不可逆的に進展する。 これらの疾患の治療, 管理において酸化ストレスを制御することが重要である。 そのためには酸化ストレスの病態生理, それへの防御機制を把握し, 特異的マーカーを用いて患者の酸化ストレス環境を非~低侵襲的に評価することが必要である。 小児医療の現場で実施される種々の治療は酸化ストレス制御を目指すものでもあるが, 今後は“レドックス”に関連してより特異性の高い細胞機能修飾薬が開発され, それらが重症疾患への集学治療の中に組み込まれていくことが期待される。 2019年度の研究成果は以下のとおりである。(1)多臓器障害により集中治療病棟に入院になった小児患者の予後予測(J Intensive Care. 2019)、(2)小児重症心臓発生異常症の予後予測と適切治療(Cardiol Young. 2019; Pediatr Int. 2019)、(3)IgA血管炎の病態生理と特殊治療(Rheumatol Int. 2019)、(4)ACTH療法の腎結石形成の病態生理(Pediatr Int. 2020)、(5)小児HPSの多臓器障害(Pediatr Int. 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果は以下のとおりである。感染性, 炎症性, 腫瘍性疾患はいうに及ばず, 呼吸器, 消化器, 腎血管, 内分泌, 代謝性疾患などにおいても,“酸化ストレス”は基本病態である。各疾患は急速進行性でも, 慢性遷延性でも組織・臓器を廃絶に導く危険性を伴うが, これを防ぐ有効な手段として酸化ストレスの制御は重要である。一方, 病状悪化を抑えながら組織・臓器を保護し再生させるためには,“血管内皮機能”を保持することも必要である。 本年度は, 数編の英文報告とともに, この方面に特化した研究成果の進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
実地臨床で行われる種々の治療がレドックス制御の要素も有することが理解できる。急性期制御は抗炎症を目指し, 慢性期制御は血管内皮保護を目指した治療とも言える。 急性期の抗炎症治療の最先端が上述の重症インフルエンザ脳症への集学治療である。慢性期の血管内皮保護薬として期待されるものとして, 血管内皮でのtonicなNO産生を保持させるシトルリン, アルギニン, BH4, 抗酸化的に血管内皮機能を保持させるHMG-CoA還元酵素阻害薬, アンギオテンシン1型受容体阻害薬, Nrf2刺激薬などが挙げられる。血管内皮機能を回復させる再生医療の今後の発展も期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度、若干の使用額(150,610円)が残りました。2020年度の実験物品、実験試薬などの消耗品の購入に使用させていただきます。どうぞ、宜しくお願い致します。
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