研究実績の概要 |
酸化ストレスは, 内部・外部刺激により生体内で活性酸素群ROS(活性窒素RNSも含む)が抗酸化システムで捕捉しきれないほど過剰に生じる状況である。酸化ストレス亢進は血管内皮障害と深く関連する。血管内皮での一酸化窒素(NO)生成は生体のレドックス環境を保持するうえで必須である。酸化ストレス亢進はarginineを基質とするNO合成を抑制し, 内因性NO合成酵素阻害因子であるasymmetric dimethylarginine(ADMA)の生成を刺激する。急速進行性疾患, 慢性遷延性疾患ではしばしば酸化ストレスが増幅され, 生体の構造や機能が酸化劣化を受けて, 組織障害が不可逆的に進展する。 これらの疾患の治療, 管理において酸化ストレスを制御することが重要である。そのためには酸化ストレスの病態生理, それへの防御機制を把握し, 特異的マーカーを用いて患者の酸化ストレス環境を非~低侵襲的に評価することが必要である。小児医療の現場で実施される種々の治療は酸化ストレス制御を目指すものでもあるが, 今後は“レドックス”に関連してより特異性の高い細胞機能修飾薬が開発され, それらが重症疾患への集学治療の中に組み込まれていくことが期待される。 2021年度の研究成果は以下のとおりである。(1)HMGB-1の炎症増幅効果と抗HMGB-1抗体の新規治療への応用(Inflamm Res 2021)(2)アレルギー疾患・呼吸器疾患における酸化ストレス増強と新規治療への応用(Children 2021; Antioxidants 2021)(3)川崎病の病態生理(Pediatr Res 2021)(4)早産児の晩期循環虚脱の病態生理(Acta Medica Okayama 2021)(5)カルシウム・マグネシウム・リン異常、尿路結石の病態生理と管理(周産期医学 2022; 小児内科 2021)。
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