研究課題/領域番号 |
19K08279
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
早渕 康信 徳島大学, 病院, 特任教授 (20403686)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 右室 / 肺高血圧 / 運動力学 / 心筋病理 |
研究実績の概要 |
小児期発症の肺動脈性肺高血圧症は、予後が極めて不良である。その病態は直径500μm以下の末梢肺小動脈の異常収縮、リモデリング、血栓形成などが引き起こされることなどで発症する。肺動脈性肺高血圧による非常に高い後負荷にさらされる右室の機能障害は生命予後規定因子であることが明らかになっているが、右心不全に対する詳細な診断方法や有効な治療方法は未だに確立されておらず、管理に難渋する病態である。右室収縮不全の発症前段階には、右室拡張不全が認められると報告されているが、その拡張障害の病態と進行の詳細も解明されていない。右室圧および心筋壁の運動力学と心筋病理・機能を統合することで、右室拡張障害の早期診断と経時的変化の診断および治療効果判定への応用・開発を目的としている。本研究では右室圧波形を減衰振動の運動方程式にあてはめ、拡張障害の病的因子としてのアクチン・ミオシンの不活化の遅延(relaxation)、タイチンや心筋線維化などによる心室の硬さ(stiffness)を評価し、それらの結果と病理学的所見・分子生物学的特徴との合致性を検討することである。まず、右室圧 P(t)を減衰振動の運動方程式 d2P/dt2+(1/μ)dP/dt+EkP=0 に適用して右室心筋のstiffnessやrelaxationの指標を評価した。肺高血圧症例では、右室心筋のStiffnessは高く、Relaxationは低下していることが判明した。今後は心筋の病理学的所見や分子生物学的検討との合致性や関連性について検討すことをすすめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定のとおりの進捗状況である。肺高血圧症例における右室圧変化が減衰振動の運動方程式に沿うことが証明できた。また、心筋組織性状との比較検討の段階にもすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では今後の2つの研究項目推進方策を設けている。 (1)小児心疾患症例・肺高血圧症例における右室圧測定と生理学的機能の比較検討を行う。もし、右室心筋を生検する機会がある症例があれば組織所見と右室 圧から得られた指標との比較検討を行う予定である。 (2)コントロールラットおよび肺高血圧ラット、さらにイマチニブ、ファスジルや肺血管拡張剤などを投与した治療後ラットにおいて右室圧波形・運動力学方 程式から得られた指標と組織学的所見や分子生物学的検討との関連性を検討する。
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