研究課題
肺動脈性肺高血圧症において高い後負荷にさらされる右心室の機能障害は生命予後の重要な規定因子であることが明らかになっているが、右心不全に対する詳細な診断方法や有効な治療方法は未だに確立されておらず、臨床現場では症例の管理に難渋することが多い。また、左心不全症例においても右室機能はその予後に大きな影響を有しており、右室機能不全の早期診断および治療は重要な問題であることが報告されている。右室収縮不全の発症前段階には、右室拡張不全が認められると報告されているが、その拡張障害の病態と進行の詳細も充分には解明されていない。本研究では、右室圧波形および心筋壁の運動力学と右室心筋病理・生化学的機能を統合することで、右室拡張障害の早期診断と経時的変化の診断および治療効果判定への応用・開発を目的としている。右室の等容性拡張期から拡張早期における右室圧降下の時定数(Tau) は拡張能評価のGold standardとされているが、この指標は左室拡張機能における経験上のパラメータであり、右室の機能的特徴が加味された生理学的機能や病態に即した指標ではない。本研究では右室圧波形を減衰振動の運動方程式 d2P/dt2+(1/μ)dP/dt+EkP=0 にあてはめ、拡張障害の病的因子としてのアクチン・ミオシンの不活化の遅延(relaxationの遅延)、タイチンや心筋線維化などによる心室の硬さの増悪(stiffnessの増悪)を評価し、それらの結果と病理学的所見・分子生物学的特徴との合致性を検討した。Stiffness を示す Ek, Relaxationの指標であるμは、心筋組織の線維化など病理学的所見との合致性が示唆された。本研究結果から心筋組織学的な所見を得ることなく、右室圧波形で組織学的異常を認識することが可能であることが検証された。
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