研究課題/領域番号 |
19K08280
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
津田 雅之 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (90406182)
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研究分担者 |
都留 英美 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (70380318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 臍帯血 / 脳性麻痺 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
脳性麻痺に対する新規治療法として本学医学部附属病院で実施されている自家臍帯血移植治療の治癒メカニズムを明らかにするため、新生仔脳虚血再灌流障害モデルを改良した独自の脳性麻痺モデルを開発し解析を行ってきた。生後9日齢の免疫不全マウスを用いてモデルマウスを作製し、3週間後にヒト臍帯血単核細胞を静脈投与すると、内在性の神経幹細胞が賦活化し、分化した神経前駆細胞は増殖しながら損傷部位に誘導されることが明らかとなった。また、組織学的な解析から、臍帯血細胞投与により脳障害側でのミクログリアの増加が観察された。そこで、脳損傷の改善における脳内ミクログリアの役割を明らかにすることにした。 まず、脳損傷から1週間と3週間後、および臍帯血細胞投与24時間後のマウス脳組織を採取した。モデル作製では、脳の右側のみを損傷させているため、採取した脳組織は障害側と正常側とに分けた。その後、酵素処理により細胞を分散させ、フローサイトメトリーを用いてミクログリアの割合を調べた。ミクログリアマーカーとしてCD11bを用いた解析では、モデル作製1週間後に増加し、3週間後には低下した。しかし、臍帯血投与24時間後、障害側でのみ、その割合は再び増加した。さらに、ミクログリアの中でも神経保護に作用すると考えられているM2型ミクログリア(CD11bとCD206陽性)の割合についても調べた。その結果、同様に脳損傷1週間後に一過的に増加したが、その後低下し、臍帯血細胞投与により、障害側で再び増加が認められた。これらの結果から、脳損傷の改善にミクログリアが関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳性麻痺モデルマウスの脳組織を採取し、フローサイトメトリーを用いてミクログリアの割合を調べ、臍帯血細胞投与により障害側でのみ増加していることをさらに確認することができたが、計画していたミクログリアの初代培養系を用いた解析には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
臍帯血細胞投与によるM2型ミクログリアの増加の原因について、マウス新生仔の脳から単離したミクログリアの初代培養細胞を用いて解析する。ミクログリアの生理機能を制御する因子は、臍帯血細胞から分泌される液性因子であると考え、ヒト臍帯血細胞の培養液をミクログリアの培養液に添加する。一定期間培養後、フローサイトメトリーや免疫細胞染色、遺伝子発現解析などによりミクログリアの変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臍帯血細胞投与によるM2型ミクログリア増加の原因について、ミクログリアの初代培養系を用いた解析を計画していたが、実施できず、その培養液等の購入を翌年度に持ち越したため。
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