研究課題
脳性麻痺に対する新規治療法として本学医学部附属病院で実施されている自家臍帯血移植治療の治癒メカニズムを明らかにするため、新生仔脳虚血再灌流障害モデルを改良した独自の脳性麻痺モデルを開発し解析を行ってきた。生後9日齢の免疫不全マウスを用いてモデルマウスを作製し、3週間後にヒト臍帯血単核細胞を静脈投与すると、内在性の神経幹細胞が賦活化し、分化した神経前駆細胞は増殖しながら損傷部位に誘導されることが明らかとなった。また、組織学的な解析から、臍帯血細胞投与により脳障害側でのミクログリアの増加が観察された。そこで、脳損傷の改善における脳内ミクログリアの役割を明らかにすることにした。脳損傷から1週間と3週間後、および臍帯血細胞投与24時間後のマウス脳組織から酵素処理によって細胞を単離し、フローサイトメトリーを用いて神経保護作用をもつM2型ミクログリア(CD11b陽性,CD206陽性)の割合を調べた。その結果、投与24時間後の障害側でM2型ミクログリアが増加していること、また、CXCL12、CX3CL1の発現が亢進していることを見出した。CX3CL1は神経細胞の生存や分化成熟を促進する作用を、CXCL12は幹細胞や未熟な細胞を誘引する作用をもっていることが知られており、その発現細胞を同定することにした。脳切片用いた免疫染色を行ったところ、CX3CL1はミクログリアやアストロサイト、CXCL12は神経細胞で発現していることが観察された。臍帯血投与により、M2型ミクログリア、アストロサイト、神経細胞から分泌されるケモカインは相互に作用し、脳損傷の改善に関わっていることが示唆された。
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