研究課題
サポシン(SAPs)-A、B、C、Dは、リソソームにおけるスフィンゴ脂質の分解において、加水分解酵素とともに必須の疎水性糖タンパク質で、前駆体であるプロサポシン遺伝子(PSAP)にコードされている。SAP-A、SAP-B、SAP-Cにはヒトの欠損症が報告されており、それぞれ、神経型リソソーム蓄積病である、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ゴーシェ病に類似した表現型を呈する。我々は、常染色体優性遺伝性の家族性パーキンソン病患者において、PSAPのSAP-D領域にヘテロ接合性の遺伝子変異を見出した。本研究では、我々の作成したSap-D 変異マウスを用いて、SAP-D変異によるパーキンソン病発症の分子メカニズムを検討した。Sap-D 変異マウスと野生型マウスの大脳組織および黒質の比較プロテオミクス解析の結果、21 個のタンパク質が有意に増加し、PSAP、HEXB、PPT1、CTSD、CTSB、LAMP1などのリソソーム関連因子が抽出された。抗PSAP抗体を用いたイムノブロット解析の結果、Sap-D変異マウスの脳では、PSAPが著増し、一部は顕著にオリゴマー化していた。免疫組織染色の結果、Sap-D変異マウス脳では、大脳皮質V層の大型神経細胞、海馬CA3領域の錐体神経細胞、黒質のドパミン神経細胞において大型のPSAP陽性の封入体が認められた。Sap-D変異マウス由来の胎児線維芽細胞 (MEF) を用いた検討では、Sap-D変異マウスのMEFは野生型に比して培地中へのPSAP分泌量が減少し、細胞内のPSAP量が著増していた。これらの結果から、PSAPの細胞内外の存在量および存在様式の変化がドパミンニューロンの変性脱落に関与している可能性が示唆された。現在、Sap-D変異マウス由来のニューロン、アストログリア、ミクログリアの初代培養細胞を用いて、分子病態の解明に取り組んでいる。
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Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids.
巻: 1866 ページ: -
10.1016/j.bbalip.2021.158972.
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