DNM1L変異によるLeigh症候群発症の病態機序を解明するため、DNM1L変異を有する患者由来iPS細胞から神経細胞への分化誘導を行い、以下の研究を行った。 1)疾患由来神経細胞におけるミトコンドリア膜電位の評価:コントロールおよび疾患由来神経細胞において、JC-1染色によるミトコンドリア膜電位の評価を行った。疾患由来の神経細胞では、ミトコンドリア膜電位が低下している所見が得られた。 2)疾患由来神経細胞のmitophagy評価:コントロールおよび疾患由来神経細胞について、いくつかの細胞負荷によりmitophagyの誘導を行った。Mitophagy Dyeによる染色を行った後に蛍光顕微鏡で観察し、それぞれの神経細胞におけるmitophagyの差について検討した。疾患由来神経細胞では、mitophagyの低下が生じている所見を認めた。 3)神経細胞における酸素消費速度(OCR)の測定:ミトコンドリア酵素活性/細胞代謝エネルギー 分析装置 OROBOROS Oxygraph-2kにより、OCRを酵素複合体毎に測定した。疾患由来神経細胞では、酵素複合体IおよびIIにおけるOCRの低下を認めた。 今回の研究において、DNM1L変異をもつ神経細胞においては、ミトコンドリアの形態異常および機能障害があることが示された。DNM1L変異によりLeigh症候群を発症する機序について、以下のような病態が考えられた。1)ミトコンドリア分裂障害から異常伸長したミトコンドリアが形成される 2)DRP1蛋白質のミトコンドリア集積障害により、autophagosomeが形成されず、その結果mitophagy障害を生じる 3)機能低下したミトコンドリアを処理できないため、神経細胞内に異常ミトコンドリアが蓄積する 4)神経細胞活動に障害を生じ、難治性てんかん、筋緊張低下、発達遅滞などの中枢神経症状の発症を来す。
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