研究課題/領域番号 |
19K08291
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
持田 京子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 流動研究員 (00834417)
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研究分担者 |
吉田 千春 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 主任研究員 (60360666)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 / 表皮癒合 / 表皮分化 / マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は先天性疾患である二分脊椎と口蓋裂疾患の発症機序が同一のメカニズム、つまり「上皮癒合の破綻」に起因するものではないか、という仮説を検証する課題である。我々が注目しているGrhl3遺伝子は、ホモ欠損胚で開放性二分脊椎を発症する。これまでの結果から、Grhl3単独変異マウスでは口唇口蓋裂は発症しない。一方、GRHL3因子とタンパク間相互作用し、また脱ユビキチン化酵素であるUSP39因子との変異マウス(Grhl3-/-; Usp39+/-)の表現型では、受精後15.5日目の胎児で眼瞼閉鎖に異常が見られることがわかった。一方、ダブルヘテロ変異マウス (Grhl3+/-; Usp39+/-)は、正常に産まれ、口唇口蓋裂は発症しないことも明らかとなった。以上から、Usp39因子はGRHL3タンパク質と直接結合し、表皮細胞動態に関わることで眼瞼閉鎖過程に関与する一方、口唇口蓋形成には影響を与えないことが示唆された。 次にGrhl3因子と核内で協調的に働くことが明らかにとなっているβ-catenin遺伝子と、Grhl3因子と直接結合し、GRHL3タンパク質の核内局在を制御する因子(X遺伝子)の表皮組織のみ欠損させたコンディショナル変異マウスの表現型解析を行った。β-cateninコンディショナル変異マウスとX遺伝子コンディショナルノックアウトマウスは、いずれも口唇裂並びに口蓋の形成不全が見られた。X因子は、Grhl3タンパク質を核内に局在させ、その際にβ-cateninと協調的に働くことで表皮細胞への分化に働く(未発表データ)。つまり、Grhl3因子を介した表皮分化の機構が破綻すると、口唇口蓋裂の発症率が上昇することがわかった。 以上の結果から、Grhl3因子の持つ2つの表皮形成機能(表皮分化と表皮細胞動態変化)はそれぞれ異なる先天性異常を発症することが示唆された。
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