研究課題
TNF受容体関連周期性症候群(TNF receptor-associated periodic syndrome, TRAPS)は5日以上持続する弛張熱、漿膜炎を特徴とする自己炎症性疾患で、炎症の分子機序ならびに診断に有用なバイオマーカーが未同定である。本研究では、TRAPSの患者検体、疾患特異的iPS細胞に対してオミックス解析を行うことにより、TRAPS炎症病態の解析ならびに再現系構築を行う。今年度は、作成したTRAPS疾患特異的iPS細胞から、マクロファージ分化因子であるcMYC, BMT1, MDM2を強制発現させることによりM-CSF依存性に増殖するマクロファージ細胞株iPS-ML作成を完了した。得られたiPS-ML細胞から分化したマクロファージ作成を行い、各種組織特異的マクロファージ分化を開始した。病原体由来物質等での刺激をおこない、正常細胞との炎症反応の違いの検討を開始した。また、マルチオミックスの一環で、リビドミクス解析の準備を開始した。新型コロナウイルス感染症の関係で、患者検体の入手が困難で、比較対象となる各種患者細胞の入手を含めて、実験の進展がやや遅れている。しかし、自施設で得られた比較対象となる患者末梢血を集積し、疾患コントロール細胞の保存を行った。また、正常コントロールから得られた末梢血から単球細胞を分離して、各種マクロファージへ分化させ、組織特異的なマクロファージ作成を開始した。
3: やや遅れている
前年度、勤務地の異動により研究が予定より遅れていたが、研究室の整備がすすみ、遅れを取り戻しつつある。まだ完全には追いついておらず、一部研究費を次年度に持ち越した。
研究環境の整備がととのいつつあり、疾患特異的iPS細胞由来細胞株を中心にした研究は可能となった。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、患者検体が入手困難なため、iPS由来細胞株、ヒト単球由来細胞株(THP-1)の遺伝子改変体を用いた研究を中心に解析を進めていく。患者検体、疾患特異的iPS細胞を用いた検討は、それらの結果を参考にしながら、同時並行して随時行っていく。
初年度、京都大学から久留米大学へ異動したことにより、研究計画の遅れを生じた。加えて、新型コロナウイルス感染症の蔓延で患者検体の入手に遅れを生じた。研究は追いついてきているが、まだ完全には追いついておらず、計画予定より余剰金が発生した。最終年度に、研究を進めていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Annals of the Rheumatic Diseases
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