研究課題/領域番号 |
19K08300
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山田 健治 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (70624930)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | in vitro probe assay / 脂肪酸代謝能 / VLCAD欠損症 / 酵素活性 / 脂肪酸代謝異常症 |
研究実績の概要 |
脂肪酸代謝異常症は細胞のエネルギー不足から重篤な低血糖や突然死を呈するような先天代謝異常症である。しかし、中には生涯発症しない、あるいは成人期以降に軽微な症状が出る程度の最軽症/無症候例が多数いる。本研究では、インビトロの実験系を用いて包括的に脂肪酸代謝能を測定し、正確に最軽症/無症候例を鑑別することが目的である。 2019年度は脂肪酸代謝異常症で最も頻度の高いVLCAD欠損症の患者由来細胞を用いて、種々のインビトロでの脂肪酸代謝能を測定した。具体的にはin vitro probe assay(IVPアッセイ)法と呼ばれる特殊な培地で培養した患者由来細胞から脂肪酸代謝の中間代謝産物であるアシルカルニチンや細胞ATPレベルを測定することで、エネルギー産生能などを評価した。また、fatty acid oxidation flux法という放射性同位元素を用いた脂肪酸代謝能測定法なども行い、多方面から患者由来細胞のエネルギー産生能を評価した。さらにそれらの方法の精度向上を目的に、試薬や細胞数の修正・変更などを行った。 また、VLCAD欠損症患者の診断目的でアシルカルニチンを測定する際に、もっとも有用だと考えられる指標を発見し、それを英語論文で報告した。この指標はIVPアッセイ法にも応用できると考えている。 IVPアッセイに用いるタンデムマス法を応用したアシルカルニチン分析についても、より精度の高い測定キットの開発に成功し、その運用を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、FAO fluxやIVPアッセイといった脂肪酸代謝能を分析する特殊検査の精度は向上している。特に精度の高い診断マーカーを発見出来たことは大きな前進と考えている。また、ATP測定や酵素活性などの基本的な測定法でも、ある程度は重症度を見分けることも可能なことが分かった。 一方で、当研究の目的である、最軽症/無症候型は、健常者由来のコントロール細胞の分析結果とオーバーラップがあり、これを同定することは現状では難しい。
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今後の研究の推進方策 |
現状の測定法では最軽症/無症候型と、健常コントール、中間型はオーバーラップするために完全に分類することは出来ず、さらなる検査の精度上昇または新しい検査方法の確立が必要と考えられる。引き続き試薬や細胞数の調整が必要である。また、IVPアッセイの根幹となるタンデムマス法を用いたアシルカルニチン分析は、これまで半定量的に行われてきたが、今後は検量線を引き精度管理を行うなど精度の高い新しい測定キットを用いることを検討している。 更に、新たに発見した診断マーカーで上記の重症度を鑑別出来るかどうかの検討を進めていきたい。 当初の予定通り、VLCAD欠損症以外の脂肪酸代謝異常症についても、上記の分析方法で重症度分類が可能かどうかも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していたFAO fluxの測定に用いる”陰イオン交換樹脂”が完売し、国内取扱がなくなったため、その購入費用に充てるはずの研究費用が余剰になってしまった。現時点では代替品はないが、今後再販売される見通しのため、今年度はその購入に充てる予定である。
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