研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、以下の通りである。 1. ヒト気道上皮細胞を用いたエンテロウイルスD68 (以下EV-D68)感染による気道局所におけるサイトカイン産生の評価;健常人由来の気道上皮細胞にIL-4を投与し、TH2環境下でEV-D68を感染させ、上清中の炎症性サイトカイン (IL-6, TNF -α,IL-8, IL-1β)をELISA法 (R&D Systems) にて測定したところ、EV-D68 感染により気道上皮から産生されるIL-6, ,IL-8, IL-1βが増加する事が判明した。一方TNF -αの産生は検出感度以下であった。このことから、IL-6, ,IL-8, IL-1βがEV-D68感染による気道上皮局所での炎症に関与しており、標的サイトカインとなる可能性が示唆された。 2. 気管支喘息モデルマウスを用いた in vivo におけるEV-D68 感染による気道抵抗・肺への影響;EV-D68マウス馴化株は、山口環境保健センターで現在作成を試みている。しかし、2020年4月現在マウス馴化株は作成に成功していない。 3.ステロイドによる予防投与およびサイトカインを標的とする予防法・治療法の開発;健常人由来の気道上皮細胞にIL-4を投与したTH2環境下において、10-5M, 10-6M, 10-7M, 10-8Mの濃度のデキサメタゾンをEV-D68感染前に投与したところ、感染72時間後の上清中のIL-6,IL-8, IL-1βの産生、およびウイルス力価がデキサメタゾン濃度依存的に抑えられている事が判明した。このことから、ステロイドの予防的投与は、気道上皮におけるEV-D68感染を抑制する効果があることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
EV-D68マウス馴化株については、山口環境保健センターでのマウス馴化株で未だ作成されていないため、引き続きマウス馴化株の作成に取り組む。IL-6, ,IL-8, IL-1βを標的としたEV-D68感染に対する抗体療法の予防および治療効果についてヒト気道上皮を用いて評価する予定である。さらに、他のウイルス感染に対する重症呼吸器感染症に対するサイトカインを標的とした抗体療法の対象として、新型インフルエンザウイルス (A (H1N1) pdm09)マウス馴化株を用いた気管支喘息モデルを用いて評価する予定である。
|