研究課題/領域番号 |
19K08301
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
安戸 裕貴 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70422285)
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研究分担者 |
脇口 宏之 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00716590)
松重 武志 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60528941)
長谷川 俊史 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90314806)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / エンテロウイルスD68 / サイトカイン / 抗体療法 / 生物学的製剤 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、以下の通りである。 1. ヒト気道上皮細胞を用いたエンテロウイルスD68 (以下EV-D68)感染による気道局所におけるサイトカイン産生の評価;健常人由来の気道上皮細胞にIL-4を投与し、TH2環境下でEV-D68を感染させたところ、EV-D68感染により気道上皮から産生される。IL-6, ,IL-8, IL-1βが増加する事が判明した。このことから、IL-6,,IL-8, IL-1βがEV-D68感染による気道上皮局所での炎症に関与しており、標的サイトカインとなる可能性が示唆された。2. 気管支喘息モデルマウスを用いた in vivo におけるEV-D68 感染による気道抵抗・肺への影響;EV-D68マウス馴化株は、山口環境保健センターで現在作成を試みているが、2020年3月以降コロナウイルス感染症のため進んでおらず、2021年3月31日現在その馴化株はできていない。3.ステロイドによる予防投与およびサイトカインを標的とする予防法・治療法の開発;健常人由来の気道上皮細胞にIL-4を投与したTH2環境下において、上清中のIL-6,IL-8, IL-1βの産生、およびウイルス力価がデキサメタゾン濃度依存的に抑えられている事が判明し、ステロイド予防的投与は、気道上皮におけるEV-D68感染を抑制する効果があることが示唆された。4. 1.3.のデータに基づいて現在論文投稿準備中である。5. 他のウイルス感染に対する重症呼吸器感染症に対する抗体療法の効果を評価するため、新型インフルエンザウイルス (A (H1N1) pdm09)マウス馴化株を用いた気管支喘息モデルに対し、感染直後にanti-IgE抗体を投与した場合、気道抵抗の増加が抑制される事が判明した。このことから、新型インフルエンザウイルス (A (H1N1) pdm09)感染による気管支喘息の増悪に対してanti-IgE抗体投与療法が有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒト気道上皮細胞を用いての標的サイトカインの選定、ステロイド・抗体療法による治療効果については予定通り進んでおり、現在投稿準備中である。 EV-D68マウス馴化株は、2020年3月以降コロナウイルス感染症のため、山口環境保健センターでのマウス馴化株は未だ作成されていない。そのため、気管支喘息モデルマウスを用いた標的サイトカインの選定、抗体療法による有効性の評価については着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
EV-D68マウス馴化株については、2020年3月以降コロナウイルス感染症のためすすんでおらず、山口環境保健センターでのマウス馴化株は未だ作成されていない。引き続きマウス馴化株の作成に取り組む。IL-6, ,IL-8, IL-1βを標的としたEV-D68感染に対する抗体療法の予防および治療効果についてヒト気道上皮を用いて評価する予定である。 また、他のウイルス感染に対する重症呼吸器感染症に対するサイトカインを標的とした抗体療法(anti-IL4, anti-IL-5, anti-TNFα)の対象として、新型インフルエンザウイルス (A (H1N1) pdm09)マウス馴化株を用いた気管支喘息モデルを用いて評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行う予定だったEV-D68ウイルス感染による気管支喘息モデルマウスへの感染実験について、新型コロナウイルスによる影響で、令和3年度に変更したため、試薬などの購入費について未使用額が生じた。この未使用額については、令和3年度も、引き続き新型コロナウイルスによる影響からEV-D68ウイルスのマウス馴化株が作成されないことが想定されるため、新型インフルエンザウイルス(A(H1N1) pdm09)感染による急性期気管支喘息重症化マウスモデルに対するanti-IgE抗体などを初めとする抗体療法などの治療効果を評価する研究に用いる試薬の購入費として併せて使用する予定である。
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