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2020 年度 実施状況報告書

急性・慢性腎障害後の腎線維化に対するMicroRNA-21を用いた新規治療薬開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K08303
研究機関札幌医科大学

研究代表者

川崎 幸彦  札幌医科大学, 医学部, 教授 (00305369)

研究分担者 郷 勇人  福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30443857)
陶山 和秀  福島県立医科大学, 医学部, 講師 (90423798)
長岡 由修  札幌医科大学, 医学部, 助教 (50513967)
石井 玲  札幌医科大学, 医学部, 助教 (60783868)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードmiR-21 / 急性・慢性腎障害 / FSGS / HUS
研究実績の概要

急性・慢性腎障害後に腎線維化が進行すると、腎臓機能が徐々に廃絶し末期腎不全に陥る。そのため、腎線維化の機序を解明し、腎障害後の硬化性病変や線維化を阻止する新規治療薬の開発が望まれている。
miRNAは、18-25塩基長の一本鎖RNAで標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳や安定性を抑制することで、発生、細胞増殖、代謝など様々な生命現象を制御している。
miRNAは、血液や尿、唾液などの体液中にエクソソームが安定して存在する特徴を有し、本邦においても2014年から成人癌患者の血中miRNAをもとにした疾患バイオマーカーの検索や診断への応用に関連した産官学連携による大規模プロジェクトが始動している。
miR-21は、線維化に関連の強いトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βを調節する重要なmiRNAである。成人領域においては、肺や心臓などの臓器障害時の線維化との関連性が示唆されている。一方、腎疾患領域においては、虚血性腎障害や成人IgA腎症においていくつかのmiRNAに関する報告がされており、miR-21がTGF-βを介して虚血性腎障害後の腎繊維化に関連することが示されている。しかしながら、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの急性腎障害や小児IgA腎症、紫斑病性腎炎、巣状分節性糸球体腎炎、高度半月体形成性腎炎などの慢性腎障害後の炎症進展と硬化病変や線維化形成におけるmiR-21の役割やその制御、新規治療薬に発展するような報告例は非常に少ない。
私達は、急性・慢性腎障害の発症・進展過程におけるmiR-21の役割とその新規治療薬としての可能性を明らかにするために、急性腎不全や慢性腎炎の動物モデル、miR-21ノックアウトマウスやmiR-21刺激薬や阻害薬を用いることで、腎線維化病態におけるmiR-21の役割やmiR-21阻害薬の新規治療薬としての可能性について検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的:私達は、急性・慢性腎障害の発症・進展過程におけるmiR-21の役割とその新規治療薬としての可能性を明らかにするために、急性腎不全や慢性腎炎の動物モデルやmiR-21ノックアウトマウスを用いて、腎線維化病態におけるmiR-21の役割やmiR-21阻害薬の新規治療薬としての可能性について検討した。
対象と方法:急性腎不全のモデルである溶血性尿毒症症候群モデルマウスや慢性糸球体腎炎のモデルである巣状分節性糸球体腎炎のモデルであるアドリアマイシン投与ラットを使用し、その発症病態や炎症進展過程、回復期あるいは硬化病変への進展時などにおける経時的な検尿所見や腎機能の変化、血清中、尿中、腎組織中のmiR-21の発現度を解析した。さらに、腎組織障害度、α-SMA、コラーゲンやマクロファージ浸潤との関連性を評価した。
結果:1.溶血性尿毒症症候群モデルマウスにおいてコントロール群と比較して腎障害発症72時間後のmiR-21発現量の増加が認められた。2.アドリアマイシン投与巣状分節性糸球体腎炎モデルラットにおいてコントロール群と比較して腎障害発症72時間後のmiR-21発現量の増加が認められた。3.miR-21ノックアウトマウスに巣状分節性糸球体腎炎モデルを作製すると、野生型巣状分節性糸球体腎炎モデルと比較して尿中蛋白/クレアチニンの低下と血清クレアチニンの低下がみられた。
考察:溶血性尿毒症症候群モデルマウスや巣状分節性糸球体腎炎動物モデルの発症進展機序にmiR-21の関与が示唆され、miR-21の阻害が病態の改善に寄与する可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

私達は、急性・慢性腎障害の発症・進展過程におけるmiR-21の役割とその新規治療薬としての可能性を明らかにするために、急性腎不全や慢性腎炎の動物モデルやmiR-21ノックアウトマウスを用いて、腎線維化病態におけるmiR-21の役割やmiR-21阻害薬の新規治療薬としての可能性について検討した。今回の検討にて、溶血性尿毒症症候群モデルマウスや巣状分節性糸球体腎炎動物モデルの発症進展機序にmiR-21の関与が示唆されたため、これらの発症病態の進展抑制の一つの機序としてmiR-21の阻害が挙げられた。そのため、溶血性尿毒症症候群モデルマウスや巣状分節性糸球体腎炎動物モデルにmiR-21の阻害薬(Blood,
120:1678-86,2012) を投与した群とプラセボ群との経時的なmiR-21の発現度と関連するmRNA発現解析、検尿所見や各種染色による組織障害度、α-SMA、コラーゲンやマクロファージ浸潤との関連性を評価する。さらには、miR-21ノックアウトマウスを用いてFSGSやHUS動物モデルを作製しプラセボ投与群と比較する。サイトカインやケモカインの発現、検尿所見や腎機能、腎組織障害度、特に、α-SMA、コラーゲン染色による線維化やマクロファージ浸潤度との関連性を評価する予定である。

次年度使用額が生じた理由

198円と少額のため使用物品がなく、残ってしまいました。次年度に繰り越し、新たな物品購入にあてたいと考えています。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Fukushima Health Management Survey. Relationship between the prevalence of polycythemia and factors observed in the mental health and lifestyle survey after the Great East Japan Earthquake.2020

    • 著者名/発表者名
      Sakai A, Nakano H, Ohira T, Maeda M, Okazaki K, Takahashi A, Kawasaki Y, Satoh H, Ohtsuru A, Shimabukuro M, Kazama J, Hashimoto S, Hosoya M, Yasumura S, Yabe H, Ohto H, Kamiya K
    • 雑誌名

      Medicine (Baltimore)

      巻: 99 ページ: e18486.

    • DOI

      10.1097/MD.0000000000018486

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rotavirus genotype and Vesikari score of outpatients in Japan in the vaccine era.2020

    • 著者名/発表者名
      Ono M, Tsugawa T, Nakata S, Kondo K, Tatsumi M, Tsutsumi H, Kawasaki Y.
    • 雑誌名

      Pediatr Int.

      巻: 62 ページ: 569-575

    • DOI

      10.1111/ped.14150

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence of post-disaster evacuation on childhood obesity and hyperlipidemia.2020

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Y, Nakano H, Hosoya M, Yasumura S, Ohira T, Satoh H, Suzuki H, Sakai A, Ohtsuru A, Takahashi A, Kobashi G, Kamiya K.
    • 雑誌名

      Pediatr Int.

      巻: 62 ページ: 669-676

    • DOI

      10.1111/ped.14162

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extracellular vesicle miRNA-21 is a potential biomarker for predicting chronic lung disease in premature infants.2020

    • 著者名/発表者名
      Go H, Maeda H, Miyazaki K, Maeda R, Kume Y, Namba F, Momoi N, HashimotoK, Otsuru S, Kawasaki Y, Hosoya M, Dennery PA.
    • 雑誌名

      AmJ Physiol Lung Cell Mol Physiol.

      巻: 318 ページ: L845-L851

    • DOI

      10.1152/ajplung.00166.2019

    • 査読あり
  • [学会発表] IgA腎症の発症病態からみた治療の進歩2021

    • 著者名/発表者名
      川崎幸彦
    • 学会等名
      第55回日本小児腎臓病学会学術集会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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