研究課題/領域番号 |
19K08304
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
石原 卓 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00533712)
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研究分担者 |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
大西 智子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60645589)
嶋 緑倫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30162663)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小児がん / 血栓症 / 播種性血管内凝固 / 凝固 / 線溶 / トロンビン・プラスミン生成試験 / 凝固線溶波形解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、凝固線溶バランスを基盤として、小児がん診療で遭遇する凝固線溶障害の病態を解明することに着目して計画・実施された。具体的には、①小児急性リンパ性白血病(ALL)のキードラッグであるL-アスパラギナーゼ(L-Asp)関連凝固障害症、②造血幹細胞移植(HSCT)関連凝固障害症、③悪性腫瘍初発時に遭遇する播種性血管内凝固(DIC)の病態解明を目的として、トロンビン・プラスミン生成試験(T/P-GA)、あるいは既存の凝固波形解析を発展させた凝固線溶波形解析(CFWA)などの包括的な凝固能・線溶能を測定する新規ツールを駆使して行った。当該年度、①に関しては1歳以上の小児ALL72例のL-Asp治療経過中のサンプルでT/P-GAを用いた解析を行った結果、「向凝固・低線溶」の相対的な凝固優位状態になり得ることを解明した(Ishihara T; Pediatr Blood Cancer. 2019)。②に関してはHSCT後に肝類洞閉塞症候群(SOS)を発症した小児例で経時的にT/P-GAで解析したところ、トロンビンとプラスミン生成の低下がSOSの凝固/線溶動態の特徴である可能性とその経時的な回復についても明らかにした(石原 卓; 第41回日本造血細胞移植学会学術集会. 2019)。③に関しては急性骨髄性白血病で線溶亢進型DICと診断した初発例(小児例と成人例の2例)でT/P-GAとCWAを用いて解析を行い、線溶能が凝固能よりも有意に亢進していることを包括的な凝固/線溶バランスの観点から初めて数値を用いて評価することができた(Ishihara T; Pediatr Blood Cancer. 2020)。以上のようにT/P-GAやCFWAなどの解析手法を用いることで、小児がんに関わる様々な凝固線溶障害の病態解明を進めることができてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
症例のリクルートに苦戦していることが理由として挙げられる。具体的には、全国規模の日本小児がん研究グループ(Japan Children's Cancer Group; JCCG)において行われていた「小児造血幹細胞移植における早期DICの実態についての観察研究/DIC-SCT15」の症例リクルートに難渋した結果、②HSCT関連凝固障害症に関しては、当該年度において少数例の報告に留まっており、よりまとまったデータの集積が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
①L-Asp関連凝固障害症に関しては、これまで検討されてこなかった1歳未満の乳児ALLに関しても、2020年度からJCCGの新たな研究として「乳児急性リンパ性白血病の初回寛解導入療法および早期強化療法に関連した凝固障害に対する新規の包括的凝固線溶機能解析を用いた探索的研究(JPLSG-ThrombALL-MLL-17)」をすでに開始しており症例のリクルートを行う。また、1歳以上のALLに関しても特に血栓症のリスクとされる10歳以上の症例を多くリクルートすべくJCCG研究として新たにプロトコールコンセプトを立案中である。②HSCT関連凝固障害症と、2020年度から本格的に着手する予定で計画されていた③悪性腫瘍初発時に遭遇するDICに関しては、当該年度においては少数例での報告に留まっており、より多くの症例をリクルートするため、JCCG以外で思春期・若年成人症例も視野に成人診療科との連携にも積極的に努めていくことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において症例リクルートに難渋したために、予定していた解析計画を遂行できなかった。2020年度は症例リクルートの方法を改善することによって、当初の計画通りのデータ集積を進めていく計画である。
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