研究実績の概要 |
本研究は、凝固線溶バランスを基盤として、小児がん診療で遭遇する凝固線溶障害の病態を解明することに着目して計画・実施された。具体的には、①小児急性リンパ性白血病(ALL)のキードラッグであるL-アスパラギナーゼ(L-Asp)関連凝固障害症、②造血幹細胞移植(HSCT)関連凝固障害症、③悪性腫瘍で遭遇する播種性血管内凝固(DIC)の病態解明を目的として、トロンビン・プラスミン生成試験(T/P-GA)、あるいは既存の凝固波形解析を発展させた凝固線溶波形解析(CFWA)などの包括的な凝固能・線溶能を測定する新規ツールを駆使して行った。当該年度、①に関しては1歳未満のALLに対するJPLSG-ThrombALL-MLL-17研究を開始し、そのパイロット研究の結果を第113回近畿血液学地方会で発表する(「寛解導入療法時に包括的な凝固線溶動態解析を行ったKMT2A遺伝子再構成陽性急性リンパ性白血病(KMT2A-r ALL)の1乳児例」、2022年6月4日)。さらに1歳以上のALLに対するJPLSG-ThrombALL-B19&T19研究を開始し症例リクルートを開始した。②および③に関しては当該年度においては自施設での症例を中心に試料収集を行った。なお、DICに関連して、その基礎疾患による病態の違いを解明するため、本研究の研究分担者である大西智子が研究代表者として敗血症性DICに関連した発表を行った際に、自身も悪性腫瘍関連のDIC担当として研究分担者の立場で参画した(Onishi T, Nogami K, Ishihara T, et al.; Thromb Haemost. 2020. Ohnishi T, Ishihara T, Nogami K.; Pediatr Int.2021.)。
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