研究課題/領域番号 |
19K08313
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
榎戸 靖 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 室長 (90263326)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / スフィンゴ糖脂質 / リソソーム / Akt / マイクロRNA / スフィンゴリピドーシス |
研究実績の概要 |
発達障害や知的障害の共通病態の一つに、発達期のオリゴデンドロサイト(OL)の分化成熟異常やミエリン形成異常が挙げられるが、そのメカニズムは明らかでない。 クラッベ病(KD)は、主要なミエリン脂質の一つであるガラクトシルセラミド の分解酵素、ガラクトシルセラミダーゼの欠損により、進行性脱髄を病因とする運動精神発達遅滞を発症するライソゾーム病の一つである。本研究では、クラッベ病の分子病態を明らかにし、その治療応用を目指す。 今年度は、我々が新たに見出した、KDマウスOLで見られるAkt/mTORシグナルの活性低下が、それらの分化発達異常に直接関与しているかを検討した。さらに、それらを改善する薬剤のスクリーニング及び作用機序について検討を行なった。 レンチウイルスベクターを用い、N末端にミリスチル化配列を付加した恒常活性化型Aktを過剰発現させたところ、KDマウスOLの分化成熟異常と細胞死が顕著にレスキューされた。次に、以前我々が見出した、KDマウスOLの病態を改善するマイクロRNAがAktシグナルによって発現制御されているか検討したところ、Aktの特異的阻害剤によってマイクロRNAの発現が抑制されると共に、阻害剤によるOLの分化成熟阻害効果はがマイクロRNAによってレスキューされた。また、マイクロRNAの過剰発現により、KDマウスOLのサイコシンの蓄積や細胞死も減少した。 以上の結果から、Aktの活性低下により、OLの分化成熟を制御するマイクロRNAの発現が低下することが、KDマウスOLの細胞病態に深く関与していることが示された。また、これらのメカニズムがKDの治療標的となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究機関の改組ならびに施設の大規模改造により、動物実験施設の整備と凍結受精卵からのマウス再個体化作業・繁殖作業に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、KDマウスOLでみられるマイクロRNAの作用機序とその治療効果を検討する。現在、発達期のKDマウス脳におけるマイクロRNAの発現変化を in situ ハイブリダイゼーションとqRT-PCRで解析している。また、候補となるサイコシン産生酵素の阻害剤によるKDマウスOLへの病態改善効果について、in vitroの解析を行なっている。得られた結果に応じて、今後さらに、in vivoでの病態改善効果について検討を行なって行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関の大規模な改組ならびに施設改築により、研究実施に必要となる実験装置や実験動物の稼働・供給のための時間を要し、研究開始が遅れたため。また、凍結受精卵の再個体化やマウス飼育費、実験試薬の一部を、他の研究プロジェクトと共用することができたため。 使用計画については、当初申請額からの減額分に応じて、使用する遺伝子組換えマウスの種類を減らす必要があるが、研究プロジェクトの内容に大きな変更はないため、次年度以降、プロジェクトの進行具合に合わせて使用する予定である。
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