前年度に引き続き、家族性WPW症候群の家系の集積を試みたが、本年度は新規の対象家系は現れなかった。そのため、前年度までに集積し研究協力に同意を得た8家系のうち、サンガ―シーケンス法で家族性WPW症候群の既知遺伝子であるPRKAG2遺伝子の病的変異を認めなかった7家系の解析を継続した。この7家系に対しては全エクソーム解析を行い、4世代以上にわたる大家系である1家系に、遺伝子X(肥大型心筋症の原因遺伝子)のミスセンス変異を検出したため、この遺伝子に対する機能解析実験を検討した。当初は、野生型および変異型の遺伝子XをHEK293細胞にトランスフェクションして、パッチクランプ法による機能解析を計画したが、HEK293細胞は心筋由来細胞でないため機能解析の評価が困難であるとの判断のもと頓挫した。続いて、CRISPR-Cas9によるモデルマウスを作成することを計画した。WPW症候群の評価法として、埋め込み型心電計による発作性上室頻拍の確認を計画したが、金額的な問題から実現不可能と判断した。現在も機能解析実験の手法について模索中である。現時点で最も実現性のある手法として、CRISPR-Cas9によるモデルマウスに対して、WPW症候群の評価法として全身麻酔下の心電計装着によるPR時間短縮の確認する方法を検討している。 また、引き続き家族性WPW症候群の家系集積を行い、原因遺伝子が特定できていない6家系についても、引き続き原因遺伝子の絞り込みを継続する方針である。
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