研究課題/領域番号 |
19K08320
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 孝之 京都大学, 医学研究科, 医員 (20625678)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能評価系の確立 |
研究実績の概要 |
本年度は様々なMEFV変異を分類する実験を中心的に進めた。当初は、iPS細胞へ変異MEFVを発現させて、マクロファージへ分化させて機能評価を行う実験を計画していた。この方法だとiPS細胞へ安定して発現させるために2,3か月、そこからマクロファージへの分化に1,2か月、合計4,5か月かかるため、1年間で10個程度しか機能解析できない制約があった。当研究室では単球細胞株のTHP-1細胞へ、変異NLRP3を発現させて細胞死を評価することでインフラマソーム活性化を評価する実験系が確立されていたため、今回、THP-1細胞へ様々な変異MEFVを発現させて、pyrinインフラマソーム活性化を評価する実験を進めた。 まずはポジティブコントロールとしてM694VまたはWT MEFVを発現させて、THP-1細胞の細胞死を評価した。具体的にはMEFV-GFPと結合させたプラスミドをヌクレオフェクションで導入し、3時間後にTcdAやUCN-01などの化合物でpyrinインフラマソーム活性化を誘導し、6時間後にGFP陽性細胞に占める7-AAD陽性細胞の割合を測定した。その結果、WT発現細胞に比べてM694V発現細胞では、死細胞の割合が3-5倍に増加していた。また、この細胞死に伴ってASC speckもM694V発現細胞で増えており、caspase-1ノックアウトTHP-1細胞では細胞死が誘導されなかった。このことから、M694V発現THP-1細胞で生じる細胞死は、pyrinインフラマソーム活性化を介したpyroptosisであることが示された。 続いて、33種類のMEFVをTHP-1細胞へ発現するためのベクターを作製した。これから33種類のMEFV変異を比較評価する準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31-32年度に進める予定だった、多くのMEFV変異の比較・分類が予定通りに進んでいる。コロナウイルス流行などで研究室が使えない期間などがあったが、当初の10個から3倍以上の33個に増やした数の変異MEFVを評価する実験系が確立した。iPS細胞を使う実験だと実験期間、試薬代が多くかかるので10個程度の評価が限界だったが、MEFV変異の多様性から考えると、より多くの変異を評価することが望ましかった。そこで、過去に研究室で開発した手法を参考に、THP-1細胞へ多様なMEFV変異を発現させ、死細胞率を評価することで、30個以上のMEFV変異を評価できる系が確立した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画から大きな変更点はない。MEFV変異の評価・分類については、当初の予定通り進捗しており、引き続き研究を進める。この研究が終わるめどが立ったら、引き続き、pyrinと結合性が変化するタンパクを同定する実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬を購入して実験を進め、研究を行うことは予定通り進み、研究費も予定通り使用した。コロナウイルス流行に伴い、学会が中止、もしくはオンラインでの開催が中心となった。そのため交通費、宿泊費が不要となったため、旅費がかからず、次年度へ繰り越すこととなった。新年度も学会はオンライン中心になる見込みのため、旅費に当てていた金額は、主に試薬代に使用する見通しである。
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