研究課題
本研究は、小児急性リンパ性白血病(ALL)の初発時のマイクロRNA(miR)発現プロフィール解析の先行研究結果に基づき、異常発現がみられるmiRの生物学的意義を解析し、新規診断/治療法開発を目的としている。標的miRのうち、多くの細胞株で高発現しているmiR-146a に着目し、miR発現レベルを生細胞のまま可視化できる sensing lentivirus vectorを作成して、生細胞におけるmiR-146aの発現を解析してみるとMLL rearrangement陽性細胞では miR 146a高発現集団と低発現集団が存在していることを見出した。続いて、miR-146a高発現細胞集団と低発現細胞集団をソートし、細胞増殖、アポトーシス、薬剤感受性、免疫不全マウスであるNOGマウスへの生着性などを検証したが、有意な差を認めることが出来なかった。続いて、miR-146a KD lentivirus vectorを作成し、MLL rearrange陽性細胞において、同様の検証を行ったところ、増殖性の低下、コロニー形成能の抑制がみられ、mRNA sequencingではNOTCH1 pathwayの活性化が示唆された。しかし、NOGマウスへの生着性には有意な差を認めず、miR-146a発現がもたらす生物学的意義の解明に難渋した。新たに、小児ALL保存検体を次世代シークエンサー用いて、マイクロRNAならびにmRNAの網羅的発現解析を行い、デポジットデータとともに統合解析を行ったところ、miR発現が一様に低下したクラスター(miR-low cluster;MLC)が同定され、それらは既知のリスク因子(高リスク融合遺伝子など)などとは独立した予後不良群であることを見出した。現在、MLC発現パターンを持つ白血病の分子遺伝学的背景を解析中である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
日本小児血液・がん学会雑誌
巻: 58 ページ: 350-357
10.11412/jspho.58.350