研究課題
この研究は、グルコーストランスポーター1欠損症(GLUT1欠損症)の成人期における妥当な食事療法を検討し、開発することを目指している。2019年度は、成人期の自然歴を小児期の自然歴と対比するための、自然歴研究、および食事療法の有効性について検討した。ヒトの中枢神経系は、グルコースを主たるエネルギー源として用いるが、GLUT1欠損症ではグルコースを中枢神経に輸送するタンパクの活性が低下するために、種々の中枢神経症状が出現する。脂質を大量に摂取するケトン食療法と言う食事療法を行うと、肝臓で産生されるケトン体が、グルコースに代わるエネルギー源となり、症状が改善する。その結果、髄液糖/血糖比、髄液糖値が、GLUT1欠損症の重症度と関連することが判明した。また、乳児期に診断されて、早期に治療を開始できた患者について、発達が良くなる可能性が指摘されてきており、その点を後方視的に検討したが、複数のバイアスがあり、実証するまでには至らなかった。ついで、GLUT1欠損症における食事療法の有効性を検討した。これまで海外の検討では、脂質の摂取重量が、炭水化物とタンパク質の合計摂取重量の3倍から4倍になる、脂質摂取量の極めて多い強い食事療法をすると有効であると言われてきた。しかし、国内の検討では、その比が1:1程度のの弱い食事療法でも有効なことがあるという報告があったが、少数例であった。今回の検討で、1.5~2.5倍程度の食事療法でも有効であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
自然歴研究と弱い食事療法の有効性を検証する研究を行った。次の研究段階である、ケトン体の日内変更に関する研究計画書を作成する予定である。
自然歴研究のめどが立ちつつあるため、今年度中にはケトン体の日内変動を検討する研究を開始する予定である。
今後、ケトン食療法を行っている患者のケトン体の日内変動を計測するための機器を購入する際に、費用が必要であり、その購入に充てる予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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